世界の要人や国際機関の見方は?

 EUからの離脱を英国が撤回する、あるいは離脱しても早期に再加盟するというシナリオの関連では、加盟国である地中海の小国マルタの首相を含む要人や国際機関が、以下のコメントを発している。

■【ムスカット・マルタ首相】
「英国はEUを離脱しない。初めて、そう思い始めている」「英国民が(国民投票で)間違いを犯したとは言わないが、ムードは変わりつつある」(2017年7月28日 英紙ガーディアンが、オランダ紙フォルクスクラントのインタビューを報道)

■【OECD(経済協力開発機構)の英国経済見通しに関するレポート】
「(再度の国民投票などの)政治的決断によって離脱の決定が覆れば、経済成長に及ぼす肯定的な影響はかなり大きなものになる」(2017年10月17日公表)

■【ジョン・カー英上院議員(リスボン条約第50条の起草者)】
「もしわれわれが欲するなら、どの段階でも考えを変えることは可能だ。考えを変える権利がない民主主義は民主主義ではない」「(EUからの離脱決定が法的にも撤回不可能であるかのような主張は)ミスリードだ」(2017年11月10日 BBC放送のラジオ番組で発言)

■【トゥスクEU大統領】
「民主主義なのに考えを変えることができないなら、それは民主主義ではない」「英政府が離脱の決定に固執するなら2019年3月に離脱は現実のものとなり、あらゆるマイナスの結果が生じるだろう」「欧州大陸にいるわれわれの心は変わっていない。われわれの心はまだ英国に開かれている」(1月16日 欧州議会で演説)

■【ユンケル欧州委員長】
「英国のEU離脱に勝者はなく、英国とEU加盟国の双方が損失を被る。離脱したとしても再加盟申請は可能で、私はそれを望む」(1月17日 欧州議会で)

■【コベニー・アイルランド副首相兼外相】
「(もし英国がEU離脱をあきらめた場合)他のEU加盟国から非常に寛大な反応を受けるだろう」(1月31日 ロンドンで講演)

再度の「国民投票」はあるか?

 この間、英国内で「EU離脱撤回論」が浮上してきたことについては、「日経ビジネス」2017年8月28日号で蛯谷敏ロンドン支局長がいち早く取り上げていた。

 それによると、「Exit from Brexit」というフレーズを、英国の新聞やテレビで目にする機会が増えた。2017年7月にはフィナンシャルタイムズに、EU離脱交渉の中止を英政府に求める公開書簡が掲載された。自由民主党のケーブル党首はEU離脱再考を求める論陣を張っており、労働党のエド・ミリバンド元党首や保守党の一部議員からも同様の声が出ているという。ただし、メイ首相がEUに対して離脱を正式に通告してしまった以上、これをすぐに撤回するのは難しい。「そこで有識者やメディアが主張し始めたのが、第三国がEUに加盟する際の手続きを定めた『リスボン条約49条』を行使するシナリオだ」「一度、正式に離脱をした後に、49条行使の是非を問う国民投票あるいは総選挙を実施し、国民の支持を得た上で再加盟するという流れだ」「もちろん、この案は英国の都合を一方的に反映したもの。これだけ世界を騒がせた英国との関係修復に、EUがやすやすと同意するとは思えない。こんなシナリオがメディアで真剣に議論されるほど、英政権は追い詰められている」のだという。

 1月26日には、英紙ガーディアンが調査機関に委託して実施した世論調査の結果が明らかになった。それによると、EU離脱の最終条件が明らかになった時点で離脱の是非を問う再度の国民投票を行うことを支持する回答が47%で、不支持が34%だった。態度未定を除くと支持が58%で過半数、不支持は42%である。メイ首相は再度の国民投票の可能性を否定し続けているが、世論はそちらに傾いている。この問題、紆余曲折がまだまだありそうだと、筆者はみている。

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