「シティー」の特別扱いを望むが、つれない態度のEU

 また、ロンドンにシティーという金融センターがあるため、英国は金融サービスについて、EUとのFTA交渉で特別扱いを望んでいる。だが、EUは今のところつれない。

 こうした「いいとこ取り」的な英国の姿勢を、EUの多くの国は快く思っていない。マクロン仏大統領は1月18日、訪英してメイ英首相と会談した後の記者会見で、英国がEU離脱後に、ノルウェーのようにEU非加盟国でありながら労働者の移動の自由やEU予算分担金などを受け入れることで単一市場へのアクセスを確保したいのか(ノルウェー方式)、それともカナダのようにEUとFTAを締結するにとどめて単一市場へのアクセスも限定的な内容でがまんするのか(カナダ方式)、決めるのは英国自身だと突き放した。

 英国およびEU加盟各国の議会で最終合意の内容を審議し批准する手続きに時間が必要であるため、移行期間に関する交渉のリミットは今年10月頃とみられている。

 だが、このリミットまでに交渉が決着するかどうかは予断を許さない。EU離脱問題で、メイ内閣は強硬派と穏健派の双方を抱えており、閣内不一致に近い状態である。メイ首相本人は意気軒高だが、政治的リーダーシップは発揮されにくい。

離脱しても、早期に再加盟することになるかもしれない

 今年1月にスイス・ダボスで開催された世界経済フォーラム(ダボス会議)に参加したメルケル独首相はオフレコの記者会見で、EUとの交渉におけるメイ首相の主体性のなさをジョークのネタにしたという。メルケル首相が「EUとの将来の関係をどうしたいのか、何を求めているのか」とたずねると、メイ首相は「あなたから私に提案しなさい」と返答。メルケル首相が「でも、あなたが離脱するのだから、私たちがあなたに提案する必要はない。さあ、何が欲しいのか」と重ねてたずねると、メイ氏は「あなたから私に提案しなさい」と言うばかりで、このやり取りが延々と繰り返される「ループ」状態に陥ってしまったという。

 どのような事態の推移を経てからそうなるのか、具体的なイメージは固まっていないものの、英国のEU離脱は結局起こらない、あるいはいったん離脱しても早期に再加盟することになるのではないかと、筆者はみている。

 国民投票でEU離脱に票を投じた人の中には、後悔している人が少なくないようである(後悔を意味する「リグレット」と「ブリテン」を合成して「ブリグレット」と呼ぶらしい)。EUからの離脱を主張する政治家が正しくない情報を前面に出して、きつい言い方をすれば有権者を「だました」ことも、すでに明らかになっている。また、EUに残留した場合よりも離脱した場合の方が英国が経済的にかなり損をすること、EUとの貿易面の交渉がうまくまとまらずハードランディング的に離脱する場合の甚大なダメージも、時間の経過とともに意識されるだろう。

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