「国際秩序の再構築」という観点からも波乱含み

 さらに、「国際秩序の再構築」という観点からも、トランプ政権の今後は大いに波乱含みである。以下の2点に筆者は注目している。

(1) 「トランプのアメリカ」がおそらくはロシアとも連携しながら「中国包囲網」形成を志向する中で、米中間の対立は軍事的な緊張が高まりかねないところまで先鋭化するのか?

~ 東西冷戦下で発足したレーガン政権で主たる敵とみなされた旧ソ連にあたるのは、トランプ政権では中国だろう。米国の対中貿易赤字と南シナ海での中国の軍事的動きをにらみつつ、「1つの中国」原則でさえ、トランプ政権は「ディール(取引)」の材料にしようとしている。仮に、トランプ政権が本気で政治・軍事的に「中国包囲網」を形成しようとする場合、日米同盟や米韓同盟の堅持に加えて、ロシア(およびインド)との関係緊密化がカギになり得る。もっとも、中国とロシアの関係は現在、決して悪いわけではない。また、中国、ロシア、インドはいずれも、BRICS首脳会議のメンバー国である。


(2) 「トランプのアメリカ」がNATO(北大西洋条約機構)の現状や欧州統合を支持しない中で、ただでさえ今年は国政選挙が多く不安視されている欧州情勢は、ますます不安定化するのか?

(A)トランプ大統領はNATOを「時代遅れ」と批判。ロシアの軍事的脅威に対する重要な防衛網へのコミットを米国が弱めることを示唆している(言うまでもなくロシアを利する行動)。大統領就任前には、NATOの加盟国がロシアから攻撃されても米国は防衛に動かない可能性にさえ言及したことがある。

(B)トランプ大統領は英国のEU(欧州連合)からの離脱を強く支持し、独メルケル政権など欧州大陸の伝統的価値観の政治から距離を置く姿勢をとっている。要するに、欧州統合の流れに今度の米大統領は反対姿勢である。欧州が団結しない場合には経済的に米国が有利になるといった計算も働いているのだろうか。いずれにせよ、欧州情勢の不安定化は「リスクオフ」による株安・円高に結び付く話である。

 ドル/円相場の今年の予想は、一段の円安ドル高か、それとも円高ドル安方向への大きな揺り戻しが起きるかで、市場で真っ二つとなっている。

 トランプ政権の保護主義的な姿勢や、それとも絡み合ったリスク要因の多さゆえに、筆者は円高を予想している。いくつもの大きな波を伴った不安定な動きになることは避けられそうにないが、今年の年末時点では98~100円程度まで逆戻りしているだろう。