主要通貨に対してもドル高懸念を表明するだろう

 だが、次の4つの理由から、筆者はこの時点で、トランプ氏は遅かれ早かれ円も含む人民元以外の主な通貨に対するドル高に対して、懸念を表明するだろうと読んでいた。

(1) 上記のようにトランプ氏は1月11日の記者会見で、中国、メキシコと並んで日本に対する米国の貿易赤字へも不満を表明していたこと。

(2) トランプ氏が前面に出している「米国第一」の保護主義的な政策と、ドル相場の上昇は、かみ合わせが非常に悪いこと。

(3) 経済政策の司令塔である国家経済会議(NEC)委員長に就いたゲーリー・コーン氏は「『米国の輸出競争力を弱める』として、ドル高を警戒する発言も繰り返しており、新政権の為替政策にも影響する可能性がある」と報じられたこと(2016年12月10日 日本経済新聞 夕刊)。

(4) 1980年代前半の「レーガノミクス」が大幅なドル高進行によって行き詰まったという歴史の教訓を、トランプ氏も十分知っていると考えられること。

「ドルを押し下げる」可能性にも言及

 そして、トランプ氏は上記のWSJインタビューで「ドルは強過ぎる」「強いドルには長所と同時に数多くの短所がある」と述べるとともに、「ドルを押し下げる」可能性にも言及していたことがその後明らかになり、市場で円買いドル売りの材料になった。

 また、トランプ大統領は1月31日、米製薬会社大手首脳を集めた会合の場で、「(米企業の競争力減少の)多くは、他国が通貨や通貨供給量、通貨安誘導で有利な立場を取っているという事実に関係している。米国はひどい状況が続いてきた」「われわれは、通貨安誘導、全ての(貿易相手)国が通貨安誘導に依存しているということに無知だ。中国は(通貨安誘導を)行っているし、日本は何年も行ってきた」と発言。

 いつものようにまくしたてるような口調で、しかも品性や教養がほとんど感じられない表現で、中国および日本の通貨安誘導によって米国の企業が不利な立場に置かれていることを強調した。トランプ政権の保護主義的な姿勢が強固であることが、市場に強く印象付けられた。そして、「米国第一」というスローガンに沿った米国の製造業復活には、ドルが強いことは障害になる。