「東京でシボレーが走っているのを最後に見たのはいつだ?」

 米大統領選の序盤ではいわゆる泡沫候補の1人とみなされていたためほとんど報じられなかったが、2015年6月16日にトランプタワーで共和党大統領候補指名争いへの出馬を表明した際、トランプ氏は次のように述べていた。

 「なんでもいい、我々が何かで日本を打ち負かしたことがあるか? 日本は何百万台もの車をアメリカに輸出している。一方、我々は? 東京でシボレーが走っているのを最後に見たのはいつだ? みんな聞け、そんな光景は存在しないのだ。日本人にはやられっぱなしだ」

 「私は、神がこれまで創造したなかで、もっとも偉大な『雇用創出大統領』になる。間違いない」(セス・ミルスタイン編 『ドナルド・トランプ 大いに語る』 講談社+α新書より引用)

トランプ氏の言動が、円買いドル売りの材料に

 「米国第一」の保護主義的な姿勢によって世界経済全体に大きな混乱や下押し圧力がもたらされる中で、米国経済が最終的にトランプ氏の唱えるようなきわめて良好なパフォーマンスを確保できるとは、筆者には全く思えない。だが、上記のようなトランプ氏の言動が昔の日米通商摩擦の連想を招いており、市場で円買いドル売りの大きな材料になっていることは事実である。

 大統領就任の少し前、1月11日に久しぶりに行った記者会見でトランプ氏は、「中国、日本、メキシコとの貿易で米国は巨額の損失を被っている」と発言。これら3か国に対する米国の貿易赤字に不満を表明した。

 この時点では、通商問題におけるトランプ氏の「主敵」はあくまでも中国であり、日本はターゲットにはならないという見方が優勢だった。

人民元に対するドル上昇に強い不満を表明

 実際、1月13日に米紙ウォールストリートジャーナル(WSJ)の電子版に掲載されたインタビューでトランプ氏は、「彼ら(中国)が為替相場を操作していることは間違いない」「『われわれは通貨を切り下げている』と言う代わりに、彼らは『ああ、われわれの通貨が下落している』と言う。下落しているのではない。彼らが意図的にそうしているのだ」「米国の企業はいま、彼ら(中国の企業)と競争できない。なぜなら、われわれの通貨(ドル)は強く、それがわれわれに甚大な打撃となっているからだ」と述べ、人民元に対するドル上昇に強い不満を表明。中国当局による意図的なドル高人民元安が、米国の企業の競争条件を不利にしているとした。