1月にスイスで開催された世界経済フォーラムのダボス会議で、米国のムニューシン財務長官は短期的なドル安を歓迎する姿勢を示した。(写真:AP/アフロ)

1年前のムニューシン氏「強いドルは長期的に重要だ」

 時計の針を1年ほど前にさかのぼらせてみよう。

 トランプ政権の財務長官に指名された投資銀行家・映画プロデューサーのスティーブン・ムニューシン氏は政権発足前日の2017年1月19日、上院で指名承認公聴会に出席。「強いドルは長期的に重要だ」「ドルは最も魅力的な通貨であり、海外から米国に投資を呼び込んでいる」と述べた。

 「強いドル政策(strong dollar policy)」とは、クリントン政権のロバート・ルービン氏以降の米国の歴代財務長官が継承してきた、米国の為替政策のいわば「看板」である。トランプ政権も「強いドル政策」を継承する方針であることをムニューシン氏はとりあえず示したと受け止めた市場関係者が多かった。

 この政策の狙いは、①基軸通貨であるドルの信認を維持する、②そのことによって恒常的に経常収支が赤字である米国への安定的な投資マネーの流入を確保する、以上2点にあると整理できる。ドルの価値が高いことイコール米国の国力の象徴だと安易に考えてドル高に誘導するような、意図的・能動的な政策方針ではまったくない。

ドル高を放置し「双子の赤字」に苦しんだレーガン政権

 むしろ、1980年代に当時のレーガン政権がドル高を放置した結果、貿易赤字と財政赤字の「双子の赤字」に苦しんだあたりから、貿易収支を悪化させてしまうというドル高のネガティブな面が市場の内外で強く意識されるようになっている。言うまでもないが、80年代よりも現在の方が、経済のグローバル化は進行しており、為替相場が各国の景気・企業業績・物価に及ぼす影響はそれだけ大きなものになっている。ドル相場の上昇が行き過ぎれば、輸出減少・輸入増加を通じて、貿易収支の赤字幅が拡大する。「レーガノミクス」の失敗をトランプ政権が繰り返さないためには、ドル高が行き過ぎることのないよう、うまくマネージしていく必要があるとも言える。