知っておきたい「トランプ用語集」

 最後に、トランプ政権の発足に際して知っておきたい「トランプ用語」の数々をご紹介して、本稿の締めくくりとしたい。

■「トランポノミクス(Trumponomics)」
 1980年代前半に大統領を2期務めた故ロナルド・レーガン氏がそれまでとは異なる発想の経済政策を展開したことを「レーガノミクス」(人物名Reaganとeconomicsのうちnomicsという部分を重ねた造語)と呼んだ事例にならい、トランプ氏の経済政策を英語メディアはこう表現している。ただし、レーガン時代と異なり、今回はブレーンや理論的な支柱がはっきりせず、議会共和党との関係も微妙であるため、実際に何が実行されるのかが明確になっていない。なお、日本では「トランプノミクス(英文ならTrumpnomics)」と表記する場合もあるが、子音が2つ続いてしまうため、語呂が良くない。

■「3G政権(3G Cabinet)」
 米民主党のクレア・マカスキル上院議員がトランプ政権が発足する前にをこのように命名し話題になった。3つのGとは、①「大富豪(Gazillionaire ~ 百万長者millionaireや億万長者billionaireよりもはるかに大金持ちを意味する言葉)」、②「将軍(General)」、③米国の大手投資銀行「ゴールドマン・サックス(Goldman Sachs)」の頭文字。これら出身の閣僚がやたらと多いことが、トランプ政権の大きな特徴である。

■「オルト・ライト(alt-right)」
 インターネット上で排外主義的・反リベラルの主張を展開してトランプ候補当選を後押しした、新しいタイプの右翼。「オルタナ右翼」と訳される場合もある。トランプ政権で首席戦略官・大統領上級顧問としてホワイトハウス入りしたスティーブン・バノン氏(右派ニュースサイト「ブライトバート・ニュース」会長)が代表格。バノン氏はプリ―バス大統領首席補佐官とは「平等なパートナー」になると、トランプ氏は政権発足前に説明していた。

■「クローニー・キャピタリズム(crony capitalism)」
 親族など縁故関係者や親しい仲間を中心に国家の経済運営が行われる体制を、批判的に形容する用語。「縁故資本主義」と訳されることもある。もともとは開発独裁の末に1990年代後半に通貨危機に見舞われたアジア諸国の関連で用いられたが、トランプ政権の関連で引き合いに出される機会が最近増えている。トランプ氏本人を含め、富豪を多数登用する政権になったため、利益相反の問題が関心を集めやすい。また、トランプ大統領の娘婿で実業家のジャレッド・クシュナー氏が上級顧問としてホワイトハウス入りした。

■「トランプ砲」
 ツイッターによる短文の情報発信(ツイートする際に140字という文字数制限があるため2~3回に分かれることもある)で、市場がしばしば大きく揺り動かされることを、スクープ報道を昨年連発した日本の週刊誌について言われた「文春砲」になぞらえた言い回し。

■「ポスト・トゥルース(post-truth)」
 英オックスフォード大学辞書部門によって、2016年の言葉(Oxford Dictionaries Word of the Year 2016)に選ばれた。直訳は「真実の後」。「客観的事実が重視されず、感情的な訴えが政治的に影響を与える状況」を意味している。英国民投票ではEU(欧州連合)離脱派が、真実ではない主張も交えながら、理性ではなく感情・情念に訴えて勝利した。米大統領選ではSNS経由で偽の情報も流される中で、トランプ候補が勝利した。そして今年は4~5月のフランス大統領選挙など、欧州の数々の重要な政治イベントの行方が、世界経済全体やマーケットの行方を大きく左右することになる。