トップの「年頭所感」を収集して時代を読み解いてみる

 企業トップが社員に対し、仕事始めにあたってメッセージを伝える「年頭所感」。主な内容がマスコミにより報道されるので、それを収集しチェックして考察を加えるのが、年初に筆者が必ず行う仕事の1つになっている。1年前にも考察を加えたが(当コラム2016年1月12日配信「戦後初の新春株価5連敗が示す『油断ならない年』」)、今年はどういう内容になっただろうか。

2017年1月4日、東証大発会の様子。新年最初の取引が行われ、4日終値は昨年末比479円高の1万9594円と好スタートを切ったが…(写真:Rodrigo Reyes Marin/アフロ)

 まず、1999年から今年まで19年間の「年頭所感」のキーワード・中心テーマは、次の通りである<図1>。

■図1:企業トップ「年頭所感」におけるキーワードや中心テーマ
1999年 (生き残りのためのリストラ)
2000年 (「IT革命」への対応)
2001年 「変革」「挑戦」
2002年 「改革」「挑戦」「スピード」
2003年 「挑戦」
2004年 (「攻め」の姿勢)
2005年 (「3つのテーマ」に集約 ~ 不断のリストラ、成長事業強化、海外事業拡大)
2006年 「価値」
2007年 (好業績に安住しない緊張感)
2008年 (景気の先行きを警戒)
2009年 「原点」「改革」「チャンス」
2010年 「リスクをとらないことがリスク」「新しい発想」
2011年 「グローバル」「10年先」「ゼロベース」
2012年 「グローバル」
2013年 「変化」「変革」
2014年 「飛躍」(ただし、経済の見方ではアベノミクス期待と先行き警戒が混在)
2015年 「グローバル」を強調しつつ、慢心を戒め
2016年 さまざまな「変化」への対応
2017年 「まさかの時代」への対応
(出所)時事通信などの報道から筆者作成

 今年の年頭所感では、想定外のことが起きる「まさかの時代」への対応や前向きな挑戦を、社員に促すものが目立った。具体例を引用したい(個別企業名は伏せて、業種のみをカッコ内に記してある)。

【2017年の各社トップの「年頭所感」】

◆「昨年は英国のEU(欧州連合)離脱決定や米大統領選挙など政治、経済ともに予定不調和な『まさかの時代』が来た。何が起こってもおかしくないと想像力を働かせ、大事に備える必要がある」(食品)

◆「今年も大きな政治イベントが目白押しだ。結果によっては先行きに不透明感が増し、市場に大きな影響を与えることになる。商社にとって変化は大きなチャンスだが、一歩間違えると取り返しのつかないことになるリスクをはらむ」(商社)

◆「想定外の展開をなるべく想定内にできるよう、モノやサービスの未来のシナリオを考え続けてほしい」「周囲からクレイジーに思われるような挑戦が求められる」(繊維)

◆「2017年も想定外の事象が起こるかもしれない。将来を容易には想定できない不確実な状況にわれわれはいる。そうした中にあっても、当社は政治や経済、テクノロジーの大きな流れの変化を見据えながら、着実に前に進んでいきたいと思う」(鉄鋼)

◆「2017年、市場は不確実性をさらに増し、急速な変化が続くと思う。この時代に世の中から存続を望まれる企業であり続けるためには、世界の変化のスピードよりも速く、自らを変革しチャレンジし続けることが欠かせない」(機械)

◆「不確実性が高い年になると予想される。時代の趨勢を見極め、改革を加速していかなければならない」(機械)

◆「世の中が『チェンジ』してきたところに、必ず『チャンス』が生まれるが、これに『チャレンジ』しなければ何も生まれない」(運輸)

◆「昨年の世界動向を顧みると、グローバリゼーションや自由貿易、多様性の尊重といった、これまでわれわれが規範としてきた価値観が揺らぎ、将来に対する不透明さが増している。しかし、こうした状況だからこそ、本質的に重要なことを見極め、腰を据えて取り組んでほしい」(化学)

◆「昨年は英国の国民投票によるEU離脱派の勝利や米大統領選挙の結果など『まさか』が何度も繰り返された年だった。いつの時代でも『まさか』は起こるが、しばらくするとそのことを忘れてしまう」「いつかは起こると認識したうえで、リスクを想定し、準備を怠らないこと。そして『まさか』のときには受け入れる覚悟が大切だ」(機械)