同社はLIBセル工場の建設も計画しているが、協業先が従来のパナソニックになるかどうかは明らかではない。米国ネバダ州でのギガファクトリー稼働に至るまで、そして現在も苦戦を強いられているパナソニックにとっては、上海の事業は必ずしもビッグチャンスとは言えないはずだ。

 そもそも、中国で拡大方向にあるEV市場が2020年の補助金廃止の展開でどこまで拡大するのか、消費者は一層高価なEVに目を向けるのか、向けたとしても日米欧のトップブランドが中国市場に供給するEVと同社が真っ向勝負で勝算はあるのか――など、不透明感が漂うリスクも見え隠れする。

中国市場で予想されるリスク

 さて、中国市場で存在感を打ち出しつつあるトヨタ、ホンダ、日産自動車のxEVビジネス、そして猛追するジャーマン3(ダイムラー、BMW、VW)、米国勢のゼネラルモーターズとフォード・モーターも後れをとらないようxEV展開に向かっている。そしてテスラの中国での生産開始から販売と、EVプレーヤーが出そろう2019年となる。

 逆に、2020年からEV補助金の支援を受けられない中国ローカルEVメーカー。ローカル各社がトップブランドの日米欧自動車各社が供給するEVと真っ向勝負できるシナリオは全く見当たらない。このまま進めば、中国政府が標榜するローカルメーカーによる「自動車強国」の実現可能性は極めて低くなる。

 他方、電池業界もしかりである。韓国トップ3とパナソニックが今後も投資を拡大する中国市場では、ローカルの電池メーカーはどこまで闘えるだろうか。投資拡大と性能進化で先を走るCATLと、LIBとEV事業を垂直統合で展開するBYDはある程度は闘えるだろうが、200社の大半のローカルメーカーの淘汰が進むことは容易に予想される。

 日産が2016年8月に電池事業を切り離したことから、NECとの合弁でLIB事業を展開してきたオートモーティブエナジーサプライ(AESC)は現在、中国のエンビジョングループへの売却が決定されている。19年4月から中国系の新会社として再スタートする予定だ。

 この計画が順調に進むという保証はあるのだろうか。もともと同社は、2017年8月に中国のファンド会社GSRに売却することを決定した。しかし、GSRの資金調達が進まなかったことで買収延期が繰り返され、結局、18年6月末に買収がキャンセルとなる想定外の事件が起きた。エンビジョングループならば大丈夫なのだろうか? 実際に19年4月に買収が実現した姿を見ないと不確実性は否めない。

 AESCの中国ファンド系への売却にあたっては、経済産業省の中でも深刻な問題として採り上げられた。しかし、それを阻止する解決策は見出されないまま、間もなく中国系企業に手渡される。

 2019年にAESCが中国系企業に変身すれば、そこに連結されているNECエナジーデバイスも同時に中国系企業の傘下に入り、日本の電池業界からは2社がなくなることになる。そしてまた、AESCが中国にLIB工場を稼働させれば、これまた中国のローカルメーカーにとっては大きなライバルとして立ちはだかり脅威となる。

 CATLは当初から角型金属缶タイプの車載用LIBを開発し、ビジネスをしている。しかし、ほとんどのローカルメーカーのLIBはアルミパック包装材を使用するラミネート型に特化している。しかし、ラミネートタイプでグローバルビジネスを展開できている電池メーカーはLG化学とAESCの2社のみである。すなわち、200社近い中国の電池各社は、日韓のこの2社との競合を必然的に迫られる。そのような状況になれば、日韓2社との差が明確になり、ローカル各社には大きな逆風が吹くことになるだけでなく、淘汰が急速に進むことになるだろう。

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