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 見学した生産現場はホンダらしく、整然としていて綺麗だ。ただし、人件費が安いこともあって、日本では完全ロボット化されている溶接工程も人海戦術にて対応しているなど、全工程に人が多い。生産タクトは135秒、日本では50秒タクトで完成車が出てくるので日本よりはかなり遅い。

 日系自動車企業でのインドでの存在感は圧倒的にスズキが大きい。インド国内での四輪車の50%をスズキが生産している。スズキの次はホンダ(5%の市場シェア)で、トヨタよりもホンダのプレゼンスが高い。さらに二輪車のスクーターセグメントでは、シェアが60%とホンダが断トツである。

 研究所の設計部門が生産工場に隣接しているので、自動車の組み立てが行い易い設計など、開発段階からの議論が一緒にできるので生産効率が上がり、その成果が如実に現れている。

 2016年には最長1時間の工場停電があったが、最近は緩和されており、大規模停電はなくなってきた。瞬停は引き続き発生しているが、UPSで対応している。

 ローカルコンテンツ(現地調達)は70%程度、日本でしか製造されない部品等もあるので、これ以上拡大する目標はあるが容易ではない。スズキは100%近い部品をインドで調達中、この分野でもスズキが先導している。

 ホンダの2030年における全世界電動化比率の目標は、内燃機関35%、ハイブリッド車(HEV)とプラグインハイブリッド車(PHEV)で50%、EVと燃料電池車(FCV)で15%という構成にある。インドでの電動化対応としての構成をどうするかは、今後の課題である。

インド市場における今後の展望

 2017年には400万台となったインドの自動車市場は、ドイツを抜いて4位に浮上した。2020年には日本を抜いて、2030年には1000万台規模になる見込みである。

 法規制は厳しい方向に向かっている。CO2規制は世界各国で欧州が最も厳しい(2021年から95g/km、以降段階的に削減)が、インドも欧州に準拠した水準で規制を強める。ガソリン車の自動車税を40%、EVには12%程度など、大きな差を付けることで電動化を進めようとする気運にある。

 石炭発電80%以上の現状で全面的にEVというのは極端な話だ。インド政府は、CO2が増えてもGDPが向上すれば良いと言う認識(上記のCO2削減目標とは矛盾)にある。2030年のGDPは、約1130兆円と展望される。

 確かに、現状のままEVを普及させてもCO2は減らないし(上記のCO2削減目標とは矛盾)、PM2.5は増加の一途を辿る。直近で市場にマッチする最大の解はハイブリッド車(HEV)と筆者は見通す。しかし、それを主張できるのはホンダ、トヨタ、スズキの3社のみなので、3社との考え方の連携、そして政府筋に提言する必要があるのではないか。モディ首相を取り巻く参謀に接触して、首相の外堀から教育する仕組みが良いのではないかと考える。

 “Make in India”を標榜するインド政府としては、日印の関係を大変重視しており、一方ではあからさまに中国を嫌う姿勢が鮮明だ。

 インド政府としてはLIBを国内で生産することをサポートする。LIBの四大部材(正極、負極、セパレータ、電解液)のどれもが現状では国内で生産できないが、とにかく“Make in India”に固執している。中国を毛嫌いしているので、中国のLIBセルが増えるようになればセルにも課税を検討する動きもあるようだ。政府は、イノベーションを促進する研究開発環境を充実させる計画をもつ。

 スズキは2017年にグジャラート州にて新工場を稼働させた。さらに、「スズキ―デンソー―東芝」が合弁でLIB生産拠点を同州に建設中。2020年の稼働と共に、スズキの電動車(日本で発売しているエネチャージ)を生産・販売することになり、インド市場における電動化の先駆けとなる。この延長上で、ホンダやトヨタのHEVがインド市場に拡散していくことを期待したい。