11月10日付の当コラム「トヨタがEVを投入せざるを得ない事情」でも書いたように、トヨタ自動車の電気自動車(EV)への事業参入の話題が業界を駆け巡った。

 一方、日米欧の大手自動車メーカーで唯一、EVの量産化を発信していないホンダであるが、本田技術研究所四輪R&Dセンターに、10月1日付けでEV開発室を設立した。量産化の計画は未発信だが、同社もEV市場への進出に準備を始めたことになる。

 これら大手メーカーのEV戦略に大きな影響を与える米国のゼロエミッション自動車(ZEV)規制に関してだが、2018年に大規模・中規模自動車メーカーに課すのは、販売台数のうち4.5%がエコカーであること。この内訳は、ゼロエミッション車と定義されているEVと燃料電池車(FCV)の合計で2%、Transientゼロエミッション車(TZEV)のプラグインハイブリッド車(PHV)で2.5%という振り分けとなっている。ただし、中規模自動車メーカーはTZEVのみでの対応で可能とされている。

 2025年には更に数値が拡大し、全体枠で22%、ゼロエミッション車で16%、TZEVで6%にまで膨らむ。この時点では、ゼロエミッション車とTZEVの比率が大きく逆転し、EVとFCVが多量に求められることになる。

 これだけでも、大手自動車メーカーにとっては大きな試練となる。そのうえで、この時点ではレベル4の完全自動運転車も実用化されているはずであり、今後数年間で巨額な開発費用が必要とされるのも事実である。

FCVの今後

 EVを軸にエコカーの開発が進むように見える中、一方のFCVはどこへ行くのだろうか。日本政府は以前、2018年のFCV普及目標台数を200万台と設定したが、これは全く現実味のない数値と化した。

 ゼロエミッション車のカテゴリーにおいて、EVを事業化しなければすべてFCVで満たさなければならなくなる。ではFCVの状況といえば、トヨタが2014年12月に、ホンダが16年3月に市販を開始したが、この2社以外では実用化されていない。

 日産自動車はFCVの開発を見直し、遅延することを判断した。それには2つの理由があるだろう。1つは、2025年時点でもFCVが普及段階まで進まず、EVが拡大していくであろうという市場的な側面。そしてもう1つは、FCVの領域ではトヨタとホンダに先行されて、特許による縛りも加わり、優位性を出せないという側面だ。

 同じような事は、トヨタとホンダがそれぞれ、1997年と99年に市場に出したハイブリッド車(HV)に対する日産の戦略にも現れた。HVでは両社の特許を避けて自前開発できる自動車メーカーはいなく、日産も例外ではなかった。

 日産の初代HVでは、結局、トヨタハイブリッドシステム(THS)の技術ライセンスを導入して商品化につなげた。そしてそこから、日産のエコカー戦略はHVではなくEVを全面的に打ち出す方向に転換された。「トヨタもホンダもHVでは巨額の利益を出せない」「EVには市場拡大性がある」という2つの理由で、EVを全面的に打ち出す戦略を描き、2010年にEV「リーフ」を世に送り出した。

 しかし、この2つの理由は正しいとは言えなかった。トヨタとホンダのHVは国内での販売量で上位を占めるに至り、一方、日産のEVは6年の歳月が流れても累積で20万台に達した程度である。