政治外交にまで及ぶ韓国勢の動向

 先に述べた中国のホワイトリストには、韓国勢のサムスンSDIもLG化学も認定されていない。韓国の高高度防衛ミサイル(THAAD)の配備によって、政治的圧力がかかり、2014年10月に竣工させた両社のLIB生産工場で生産供給されるLIBは、中国市場では限られたローカルの自動車メーカーとしかビジネスができていない。建設当初の大きなビジネスチャンスが、一転して大きな危機を招いたことになる。

 韓国側もその状況に甘んじているだけではないようだ。政治的圧力に対しては政治的解決を図ろうとする動きがあると、韓国の報道機関であるハンギョレが明らかにしている。韓国の文在寅(ムン・ジェイン)大統領が11月13日に、中国の李克強首相に対して、「ホワイトリスト」対象外となっている韓国2社の認可要求をしたとのこと。これに対し、李克強首相は「中国の消費者の安全に関わる問題なので、慎重にしなければならない」とのみ答えたと言う。

 それに連動して、両国の実務級が、本問題を協議していたことを確認したとの報道もある。12月に開かれる韓中首脳会談以前に、互いの関係修復を図る目的で両国がこの問題を協議したということは、好転する可能性も出てきたと言えるかもしれない。12月の韓中首脳会議を注目したい。

 両社は中国でのこの逆境の一方で、欧州事業を展開中である。LG化学は既にポーランドにLIB生産工場を建設し、拡大中だ。サムスンSDIもハンガリーへのLIB生産工場建設投資を進め地盤固めを図っている。韓国勢の事業戦略は、ここでもスピーディな投資判断と実行が図られている。

 第三勢力のSKイノベーション(SKI)も、この2社の動きを横目で見ながら欧州拠点を構築中である。またSKIにとっては、中国のホワイトリストも大きな関心事項であり、同社も12月の韓中首脳会談に寄せる期待は大きいはずだ。

ますます勢い付く中国勢

 近年、特に躍進が目立つのが中国CATLとBYDの2強である。BYDはこれまで中国国内での電動車と電池事業を集中的に手掛けてきたが、今後はいよいよ欧州にEVバス事業展開を開始する。LIB事業についても同様な展開を考えている模様だ。

 ただし、海外進出した場合の懸念は、特許に関する知財障壁である。ここをどのようにかわすのか、その手の内を見たいものだ。

 一方のCATLは殊更、鼻息が荒い。サムスンSDIがPHVおよびEV用LIBを独占的に供給してきた独BMWに対して、割って入る形で供給契約を交わした。同様に韓国現代自動車に独占供給してきたLG化学に割って入り、ここでも供給契約を交わした。VWとも供給契約につなげ、今後もビジネス協業の一層の拡大路線を描く。その路線を裏付けるがごとく、2030年までに同社は150GWhの生産キャパを目指しているというから、日韓勢に対する大きな脅威となって立ちはだかる。