テスラが手掛ける高級EV路線を、日米欧の自動車メーカーができないわけはない。テスラのEV事業に割って入ることは困難なことではなく、日米欧の大手自動車メーカーならばブランド力と技術力を生かして対抗できるシナリオは作れる。現に、BMWのEVである「i3」はデザイン性とブランド力で求心力があるし、PHVである「i8」は高級車そのものである。BMWが「i8」をベースに、またはその延長上にEV化を進めることは可能だ。

 一方、テスラが推進しつつある低価格路線のEVは、既存自動車メーカーにとってはより現実的な解であり、多くの車種が商品化されることになるだろう。このように時間軸で考えてみれば、テスラのEV事業には大きな壁が立ちはだかる。その壁を、どうやって同社が取り崩していくかの戦略が問われることになるであろう。

 それは、同社が大手自動車メーカーでは手掛けられないようなどのような部分に注力するのか、そして競合EVがひしめく中で顧客に選んでもらえる商品戦略をどのように打ち出してくるのかに掛かっている。非常に注目されるが、いずれにしろ決して容易なストーリーにはならないと筆者には映る。

xEVの拡大に向けた部材業界の賭け

 一方で、EV量産のカギを握る日系部材メーカーの、投資戦略を図に示す。まず注目されるのが住友化学だ。同社は、パナソニックのLIBに供給するセパレーターを手掛ける事業に対して200億円を投資し、韓国に増産体制を整えると言う。これにはパナソニックが、受注が好調なテスラに対してLIBを供給しているという背景がある。

 ただし、新型モデルSが予定通りに受注した場合はそうであるが、そうならないことへのリスクヘッジは大丈夫であろうか。住友化学がこう判断した後に、日米欧大手自動車メーカーがEV参入を発表したので、それらの自動車メーカーにつながる電池メーカーへの供給というシナリオも、考えておくべきだろう。

 東レも旭化成もセパレーターへの投資を積極的に進める。セパレーターは日系企業が圧倒的な強みをもつ部材であるがゆえの投資拡大である。

部材企業の積極投資

 2009年以前に、三菱自動車や日産がEV事業を開始すると表明、EVの市場拡大に期待できるとの展望が社会を駆け巡った際に、それに呼応した電池業界や部材業界は一斉にビジネスチャンスとして国内外へ大規模な投資を図った。電池業界ではジーエスユアサ・コーポレーション(GSY)が、部材業界では三菱化学がその代表例であった。

 しかし、EVの販売は全く計画通りに進まなかった。販売台数が伸びなければ投資回収はままならない。特に、三菱化学の誤算と失敗はかなり大きかったようだ。

 部材業界も、自動車業界や電池業界の見解や展望に耳を傾けるのは大切であるが、鵜呑みすると大変なことになるという証しであった。自らの市場展望と分析、客観的な判断、そしてリスクヘッジした事業戦略をしたたかに描かないと、そこには大きな落とし穴があるかもしれない。