フォードにおいては、向こう4500億円を投じてxEV開発を加速、その中には当然EVも大きな柱と設定している。

 このように眺めると5年後の2021年段階のEV市場には、既にEV事業を09年から開始している三菱自動車、10年から事業を開始しEVの累積台数では20万台を超えている日産、12年に量産EVを発売したルノー、13年からEV事業に参入したBMW、FCAといった先行している面々に、マツダ、トヨタ、富士重工、VW、ダイムラーなどが一気に加わる。中でも、日産は三菱自動車とのxEV協業を今後加速する中、一気にEV製品を市場に投入してくることになるだろう。

 そういう中で、国内大手では唯一新規EVに関する発信をしていないホンダだが、20年段階でEVを準備していなければ、ZEV対応と言う意味ではPHVと燃料電池車(FCV)で勝負するしかない。しかし、価格もコストも高く、インフラ整備にも時間が多くかかるFCVが、米国市場で20年に拡散する可能性はまずない。とすると、PHVで重点的にZEV対応を迫られることになり、十分なシナリオとは言えないだろう。

 トヨタと同様にEVには抵抗感を持っていたホンダだが、現在の同業他社の動向を見るとホンダもEV戦略を打ち出さざるを得ない状況を迎えている。ホンダのEV事業化について、早期に発信してほしいものである。

 韓国の現代自動車グループも同じようにEV戦略を描くべきであろう。現時点での同社の最大関心事はPHVのようだが、これもホンダと同様、EVを避けての強力なシナリオは見え辛い。いずれ近いうちに、現代自動車グループもEV事業への本格参入を発信するのではないかと考える。

テスラにとっては大きな試練が待ち受ける  

 このようにEV競争が本格化する中で、先行してきた日産、三菱、米テスラ・モーターズにとっては試練が待ち構える。新規参入大手自動車メーカーと中堅自動車メーカーを迎え打つ上記3社の戦略はどうなるか。

 日産と三菱自動車は、三菱自動車の燃費不正問題をきっかけに、xEVの協業事業を強化する。電動化の開発には巨額な資金を必要とする中、三菱自動車にとっては生き残りをかける追い風の共同事業となる。

 日産にしてみれば、出遅れていたPHVで、三菱自動車が先行してきたPHVの「アウトランダー」の技術と製品戦略が大きな支えとなる。2020年時点のZEV対応で、両社は複数のEVとPHVの武器によって迎え撃つことが可能となる。

 さて、テスラの場合はどうなるだろうか。これまでは競合企業や競合車種が限られていたが、日米欧の巨大企業がEV製品をそろって市場に出すことで、同社にとっては大きな脅威になることは必至だ。前回の11月10日のコラムの最後に、そのことを疑問として締めくくったので、そこを少し掘り下げてみたい。

 大手および中堅自動車メーカーは、ZEV規制を満たすために、2018年時点ではEV、PHV、FCVの売り上げが販売台数の4.5%以上を占めなくてはならず、これが25年時点では22%以上となる。さもなければ、同業他社からクレジットを購入しなければならない。規制の台数が急激に増えることになるため、もし大幅にクレジットを購入することになれば経営へ多大な悪影響を及ぼすこととなる。

 また、生産しただけで規制をクリアできるわけではなく、消費者が購入して初めて規制値に対してカウントされる。このため、自動車各社が必死になって製品戦略を構築するのは当然だ。各種自動車の量産を生業としてきた自動車メーカーが本格的にEVの量産に移行した場合、一本足打法としてEVを市販するテスラにとっては試練になること間違いない。というのも、既存メーカーは、内燃機関自動車やHVで培った技術やノウハウ、加えて部材調達において、テスラよりもポテンシャルはかなり高いと思われるからだ。

 「モデルS」で社会にインパクトを与えたテスラだが、新型「モデル3」への期待が高まり、先行予約では35万台超になっているという。ただし、予約者の100%が購入するわけではない。そしてそこに、大手および中堅の自動車メーカーがテスラ社の牙城に侵攻することになれば、消費者の志向が変わり、テスラから移り変わることは十分に考えられる。