例えば、米国カリフォルニア州のゼロエミッション(ZEV)規制は、2018年から一段と強化される。トヨタとホンダが主流として進めてきたHVが、ZEV車の対象から外されるのだ。さらにはカリフォルニア州以外の他の州でも同規制の導入の検討が進んでいる。

 HVはエンジンが主動力なので、ZEVの定義に含まれないというのが、カリフォルニア大気資源局(CARB)の言い分だ。しかしその裏には、HVに関してはトヨタとホンダが圧倒的に強すぎるという、政策的な背景も少なからずあるだろう。

 HVが外されることによって、対象車はEVと共に、PHV、FCVの3カテゴリーに限られた。そしてZEV規制は18年以降も段階的に強化される予定。大手・中堅自動車各社が25年には、これらの車種群で販売台数の22%以上を占めるように規制される。

 トヨタは新型プリウスPHVを間もなく発売する。2012年の同PHVに搭載したリチウムイオン電池(LIB)は総エネルギ―量が4.4kWhでEV走行は26.4㎞であった。新型ではLIBエネルギー量を2倍の8.8kWhとし、EV走行で60㎞以上を可能とする設計とした。このような仕様にしたのは、2つの理由がある。1つはEV走行の距離が短いという消費者の意見を反映したこと。そしてもう1つは、中国をはじめとするxEVへの補助金制度においてPHVならEV走行が60㎞以上を優遇することだ。

 このようにトヨタがEVも強化する路線を敷いた背景には、ZEV規制、欧州のCO2規制、中国の環境規制と補助金政策などがある。しかし、それだけではない。日米欧韓の自動車各社がEVを商品化して市場に出してきた場合に、消費者にとってトヨタのEVが選択肢にないことは、エコカーの覇権を世界で握りたいトヨタにとっては許されないのだ。

 今後、電池やデバイスが進化し、また車体の軽量化が進めば、EVの航続距離は拡大し、価格も安くなる。環境規制を追い風に受けながら、EVが各国の市場で認知度が高まるものと予想される。その大波はFCVの波より先に来るはずだ。

 とすれば、EVに冷ややかだったホンダも戦略的対応が必要になってくるであろう。HVをエコカーの主軸と置くスタンスを変える必要はないだろうが、各種規制とEVが各社から供給される2020年以降、商品がないというわけにはいかないはずだ。

中国政策補助金終了後の行方は?

 上記のように、各社のエコカー戦略に大きな影響を及ぼすと思われる中国政府の補助金制度だが、現在、中国が直面しているPM2.5問題(冬場の暖房で使用する低質炭消費増大にて深刻化する)などに対しては、中国市場でのEVの拡大は何ら解決策にならない。それどころか、低質低効率石炭発電量を増大させPM2.5を一層拡散させるシナリオとなることは、以前にも記載したとおりである。

 EVは中国ローカルメーカーにとって参入障壁が低かったこと、海外自動車メーカーが積極的にEVを事業化していなかったことが、中国政府がEV優遇政策を進めてきた根源であったが、これも2020年までの時限立法として終わりが来る。補助金を狙ってローカルの新規参入自動車メーカーや電池メーカーがひしめき、補助金詐欺まで横行しているのが実態で、その分、補助金枠の先食いが進み、2020年を迎えないまま補助金制度は終焉を迎える予測もある。

 そうなると、中国市場において消費者のマインドはより使い勝手の良いHVやPHVに動くものと予測される。中国でxEVの生産を開始しつつある日系自動車各社にとって、中国ローカルに手厚い補助金制度の終焉は今後の追い風となるだろう。

 一方で、EVも選択肢の中に入れておく必要のあるトヨタやホンダにとって、中国をはじめとする世界の各市場に最適な商品を供給する戦略は、開発費や開発陣人材の確保の点でも大きな課題がある。ましてや、自動運転の実用化もスピード競争を強いられている中、従来からの既存技術に対するエンジニア以外に期待が寄せられる。

 逆に、開発原資が潤沢ではない中堅規模の自動車各社や、海外勢でも電動化に遅れをとっている自動車メーカーは、生き残りをかけた戦略構築や大手と連携するシナリオ作りが急務である。同時に、EV一本足打法に特化しているテスラのEV事業も大きな影響を受けるに違いない。