決算会見で説明するトヨタ自動車の伊地知隆彦副社長(写真:ロイター/アフロ)

 先週、機会があって韓国を訪問した。現代自動車や韓国電池工業会の面々と話をしたが、サムスン電子がスマホ爆発の原因について何ら新たな発信や報告がないことに対して、不満を募らせていた。大企業だけにサムスン電子の動向には、皆、目を光らせている。

 その現代自動車だが、現在3つの苦悩を抱えている。1つはメディアでも報じているように、労働組合の力が強いことだ。生産現場でのストライキの断行が経営を圧迫している。現代自動車労組は今年のはじめから10月末までに24回のストを行った模様だ。現在、ストは中断しているものの、労使交渉の結果によってはストが再開される可能性もあるとのこと。現代自動車は2007年から現在まで賃金を50%以上引き上げてきたにもかかわらずのストであり、それだけ組合の強さを物語っている。

 2つ目は、米国市場でのシェアが減少していること。現代が米国市場に打って出た「ソナタ」が、ホンダの「アコード」やトヨタの「カムリ」を追い越し、北米市場で高い評価を受けていた時代は過去の話。今や、ソナタに続く戦略旗艦車の存在感が薄くなっている。

 そしてもう1つは、自動車の電動化と自動運転の両輪で、日米欧に遅れをとっていること。この3つ目の課題は、これからの自動車各社が生き残りをかける大きな柱となるだけに、現代自動車として早急に戦略を立てることが必要であろう。

究極はEVかFCVの狭間で

 このように、各社が重要視する自動車電動化の領域において、今週、大きなニュースが報じられた。トヨタ自動車が、2020年までに電気自動車(EV)の量産体制を整え、EV市場に本格参入するという内容だ。

 これまでトヨタは電動車両(xEV)では全方位戦略をとってきたものの、2012年以降、EVに関しては、単独での商品(テスラとの共同事業では一部展開)を市場に打ち出して来なかった。下の図に示すようにあくまでもxEVの主役はハイブリッド車(HV)とし、究極の環境車としては燃料電池車(FCV)に重きを置いており、EVには消極的であった。これは取りも直さず、国内外の市場で消費者が食指を伸ばす商品群ではないことを知っていての話であったからだ。この考え方はホンダでも同様である。

xEV群における各国・各社の対応

 一方、日産自動車はEVで先行してはいたものの、HVやプラグインハイブリッド車(PHV)での存在感は乏しい。さらに、FCVの開発はこれまで進めてきたものの、最近、開発延期を判断した。EV開発を加速し、EV領域での業界のリーダーを狙う戦略を強めた格好である。

 しかし、最近の各国の環境規制や補助金制度を鑑みると、必ずしも消費者視線だけでは戦略を立案すべきではないという状況が見え隠れする。11月8日に開催された記者会見でトヨタの伊地知隆彦副社長は「究極のエコカーはFCVという考えは変わっていない」と述べる一方で、「ゼロ・エミッション達成にはEVの選択肢がある」と改めてEVにも注力する姿勢を明らかにした。トヨタが大きく方向を変更せざるを得なかったのも、環境規制や補助金制度が大きく影響しているわけだ。