厄介な中国政府のバッテリー認証

 上記のように中国メーカーによるAESC買収の可能性を述べたが、そう考える背景にあるのは、中国がエコカーの大きな市場になると見られているからだ。巨大な市場で主導権を握るべく、自動車メーカーもそして電池メーカーも様々な取り組みを行っている。

 中国市場においては、エコカーの補助金制度に対する中国政府の対応が大きな影響を及ぼす。そして、EVやプラグインハイブリッド車(PHV)を主体にした補助金制度において、今後は電池メーカーの立ち位置が要となる。

 というのも、中国政府が指定する電池メーカーの電池を搭載していなければ、そのエコカーは補助金の対象から外れるというシナリオが待っているからである。現在は、17社の電池メーカーがバッテリー模範基準認証を受けているようだが、中国ローカルメーカーのみである。国策としての保護政策を考慮してのことであろう。7月28日のコラム、「サムスンのBYD出資は中国市場成功への布石?」では、認証を取得しているメーカーは60社と記述したが、その後、事故等の影響により方針変更を行い、現在では17社に減らしたもようである。

 西安にLIB製造拠点を有すサムスンSDI、そして南京に同拠点を有すLG化学も現時点では指定を受けていない。常熟市にニッケル水素電池の製造拠点を構えた日系のプライムアースEVエナジー(PEVE)も、大連にLIBの製造拠点を構えつつあるパナソニックもしかりである。

 10月19日の韓国経済新聞の報道によれば、18日に大田で開催されたハンコックタイヤが新たに設けたテクノドームの竣工式の会場で、LG化学の朴鎮洙(パク・ジンス)CEOが以下のように述べたという。「年内に中国政府のバッテリー認証が可能と期待している。製品の品質には自信があるので今回の認証は通過できるはず」。

 また、「次回の認証は10月末または11月初めに始まると期待している、前回の認証で課題として突きつけられた中国内での1年内の量産開始とR&D強化に関しては、計画を立てたことで認証要件を満たした。次回の認証で良い結果を期待している」と強調したとのこと。

 しかし中国政府の認証要件といっても、たとえ前回の認証での課題をLG化学がクリアーしても、次回の認証では新たな課題を突き付けられる可能性もある。中国の政策は状況によって中身を変えることが頻発してきたので、LG化学にとっても緊張感が最高潮に高まっていると言えよう。

 一方の日系電池メーカーはどうであろう。もちろん、中国政府のバッテリー模範基準認証を受けるに越したことはないが、中国のローカル自動車メーカー開拓を優先して中国市場に進出した韓国系の2社とは状況が異なる。

 PEVEの主要ビジネスモデルは、トヨタが中国で生産するHVに搭載するニッケル水素電池の供給であることから、バッテリー模範基準認証を受けなくても中国市場でのビジネスはトヨタと共に進展する。

 大連に進出したパナソニックは車載用LIBを製造するが、主要顧客はホンダの電動車両(xEV)であり、トヨタのxEVでもあることから、こちらも同様にホンダ車やトヨタ車が拡販されていくことで中国国内でのビジネスは自立する。

 今後、xEVには米国ゼロエミッション自動車(ZEV)規制、欧州CO2規制、さらには中国の環境規制などへの対応が求められるなど、自動車業界で生き残るための長期的な戦略が要求されている。加えて、上述した中国政府のエコカー補助金制度、そしてバッテリー模範基準認証制度は、特に外資系自動車業界と電池業界の戦略を推進するにあたって非常に悩ましく大きな波紋を投じている。