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 本コラムの主題である「技術経営――日本の強み 韓国の強み」に相応しいフォーラムが10月18日にソウルで開催された。韓国メディア大手のECONOMY CHOSUNが主催した「Global Conference」である。同社が主催するフォーラムは毎年テーマが異なる。過去には経済分野を採り上げたフォーラムもあり、ノーベル経済学賞受賞者も登壇している。一方、今回のフォーラムは、「日本に学ぶ」というコンセプトに設定された。その結果、講演者6人は全て日本人という構成で開催された。

 グローバルビジネスの先端を走る投資家でMistletoe CEOの孫泰蔵さん、政治分野では内閣官房参与の浜田宏一さん、産業分野で筆者、大学側からは韓国を30年に及んで研究している早稲田大学の深川由起子教授、そして中小企業の代表格として石坂産業の石坂典子社長、日本レーザーの近藤宣之社長という講師陣。70分前後の講演と対談が執り行われた。参加費は2万円近くであったものの、約250人が聴講した。

 孫さんの話は、スタートアップ企業やベンチャーなどを発掘し、そこに投資をするビジネスモデル、起業するための心構え、そして日本の教育方針に対する提言などで、韓国の若い世代が関心をもって耳を傾けていた。浜田さんの講演は、アベノミクスの成果を中心に、深川教授は日韓の働き方などを中心に話題を提供した。

産業分野での日韓比較

 筆者は、ホンダとサムスンでの経験を通じて技術経営を分析した内容について講演した。例えば、ホンダでのイノベーションの代表格はホンダジェットの航空機だ。なぜこれが事業化に至ったのか。二足歩行ロボット「アシモ」も燃料電池車(FCV)もそうであるが、1986年に埼玉県和光市に創設された「和光研究センター」の機能に遡る。二輪事業、四輪事業などの既存事業とは全く異なる新規事業化のための使命のもとで進められた研究開発、そしてその成果である。2018年10月10日現在、85機を納入した航空機事業もFCVも、事業化に至るまでには、なんと30年の歳月を要したのである。

 この長きにわたる研究開発を持続するのは並大抵ではない。三菱電機のSiCパワー半導体も30年近い研究開発によって実用化されたが、開発陣も世代を超えてつなぐ必要があるし、経営陣にもそれ以上の連携が問われる。ホンダジェットも途中で中断の危機に見舞われたが、開発陣の情熱が経営トップを説得したといういきさつがある。だからこそ、その根底には経営陣と開発陣との密なコミュニケーションによる信頼関係が不可欠だ。

 一方、サムスンでの研究開発も事業化を意識して十分になされているものの、事業化までに20~30年の長きにわたるテーマはまずない。時間をM&Aなどの手段で短縮化して、タイミングを見計らって早期に事業化を展開することが得意である。それによって、世界トップの半導体事業、スマホ事業、モバイル用有機EL(エレクトロルミネッセンス)事業、薄型テレビ事業などでの存在感は極めて大きい。テレビ用の大型有機ELは、同じ韓国勢のLGディスプレーが市場を独占している。