何が法令違反を招いたのか、3つの要素

 2015年に発覚した欠陥マンション事件、すなわち三井住友建設による施工で、三井不動産レジデンシャルが販売したマンションでのデータ改ざん事件も記憶に新しい。また、同年に発覚した東洋ゴム工業の免震ゴムでの大規模なデータ改ざんと、直後の防振ゴムでの不正行為など、他の業界でも類似した事件は起こった。

 何も産業界での話だけではない。学術界においても、東京大学をはじめ複数の大学でデータ捏造による不正論文が摘発されて撤回が起き、それだけに留まらずに懲戒解雇や辞職なども続いてきた。2014年、STAP細胞事件も日本のみならず、論文不正事件として全世界を駆け巡った。

 多くの分野で不正事件は起こっていることだが、とりわけ産業界での影響はことさら大きいのは事実だ。ではなぜ、これほど立て続けに不正事件は起こるのであろうか? それも一部上場のグローバル大企業に集中している。そこには恐らく3つの要因があるだろう。

 まずは何と言っても、経営トップと経営陣の法令遵守に対するアンテナ感度の低さである。ここがしっかりしていれば、ほとんどの不正事件は防止できていたに違いない。トップのメッセージとして幹部経由で組織に十分伝わっていれば、それを遵守しようとする考えは浸透する。トップから現場まで、一気通貫で法令遵守意識が共有されていないことが、不正の温床を形成してきたと言えるだろう。

 2つ目は、問題が生じたときに不正を表面化できない空気が社内に漂っていることだ。仮に、問題意識をもって業務に臨んでいれば、初期段階で誰かしら正義感を働かせて発信していたかもしれない。しかし、全体的に重い空気が流れていれば、そういう発信自体が自身にとって危険と察することで、誰も何も言えない、言わない状況が自ずとつくられることになる。これは正に、東芝の不正会計事件と相通じるものである。

 3つ目は、国の法制度を悪用したのは当事者側であるものの、それを許してしまっている国側の甘さである。企業側から甘く見られていたという表現が適しているであろう。性善説で任せた国の制度が、企業に裏切られたということになる。

法令違反を招かないためには

 ならば、今後このような事態を招かないためには、どうあるべきなのか?

 まずは、産業界各社での棚卸が必要だ。他山の石として教訓にすべきことは大前提として、経営トップから現場社員に至るまで、法令遵守違反が企業にどのようなことをもたらすのかの教育の棚卸である。

 2つ目としては、内部告発制度をつくること。経営トップの法令遵守意識の感度が低ければ、管理職もそして現場までも伝わりにくい。その結果として、都合の悪いことが言えない風土となる。こういった風土をつくらないためにも、ガバナンスの取り組みとして、経営陣へ直接提起できる内部告発制度が必要だ。告発した本人が不利益を受けないことはもちろん、むしろインセンティブを与えるくらいの経営方針をうたってほしい。

 3つ目としては、法制度に関する国の監視体制の強化だ。抜き打ち調査を実施したり、報告基準を強化したりなどが必要だろう。しかし、それでも完全な歯止めとすることには限界もある。であれば、法令遵守に違反した際の国側からの罰則を数段厳しくすることが必要かもしれない。巨額なペナルティを課す、経営トップなどの主要経営陣の退陣を迫るなど、これまでにない施策が必要であろう。

 企業規模でもなく、売り上げ規模でもなく、利益・利益率でもなく、顧客から信頼され期待される企業こそが優良企業だ。そのような企業こそが成長発展し、生き残り続けられるであろう。企業経営としての1丁目1番地のあるべき姿、あってはならない姿を見せつける事件である。