10月から販売が開始された電気自動車(EV)の新型「リーフ」も対象とのことで、EVシフトを牽引すべき同車に水をかけた格好だ。資格を持っていない従業員が新車出荷前の完成検査を担当していたとのことで、例えてみれば無免許運転のような違反に相当するだろう。

 事の発端は9月18日以降に行われた国土交通省の立ち入り検査で明らかになったとのことだが、国交省の立ち入りがなければ今も続いていたことであったろう。

 本来は1台ずつ検査すべき国の制度を自動車各社が肩代わりして実施しているのが現在の型式指定制度であるが、これを悪用した事件と言うことになる。完成車検査の現場では有資格者を示すバッジをつけていない従業員が混じって検査を行っていたということだから、周辺の有資格者も非有資格者もその問題に関しては認知していたはずだ。検査管理体制の不徹底というより、これも組織ぐるみの不正事件と言えるだろう。

 結局、121万台規模のリコールを行うという判断を下した。点検コストは1台につき1万円以上かかる作業となることから、リコールを完了するまでの費用と時間は膨大になるものと推察される。当然ながら、中古車市場での日産車の価格にも影響が及ぶであろう。

自動車業界の過去の教訓は生かされていない

 自動車業界での不正事件と言えば、2016年4月に発覚した三菱自動車の燃費不正問題も記憶に新しい。決められた走行条件でのデータを取得せずに、有利な走行抵抗を採択し机上計算で算出した数値を申告した事件で、本来表示されるべき燃費とは10~15%の乖離があったとされている。このため中古車市場でも対象車種で20~30%価格下落が起こったという事実がある。

 三菱自動車事件の直後に、スズキの不正問題も発覚した。実際の燃費測定を国が指定する方法とは異なる形で設定し、燃費が良くなるような計測手段を用いたのである。国が定めている「楕行法」の実走試験ではなく、個別のデータを組み合わせての不正だったとされている。

 一方、同時期に米国ではゼネラル・モーターズ(GM)もSUV(多目的スポーツ車)の3車種で燃費不正表示をしていたことが明らかにされた。数値的には0.9km/L燃費を良く表示していた。しかしそれによって、消費者への損害賠償を最大10万円にすると決定した経緯がある。            

 前年の2015年秋には、独フォルクスワーゲン(VW)のディーゼル排ガスと二酸化炭素排出不正事件が世界に大きな衝撃を与えた。世界規模で発覚した燃費不正事件だが、燃費表示は自動車各社の自己計測と自己申告に委ねられているわけで、不正の温床になりやすいことを明らかにした事件であった。 燃費指標は自動車メーカーの技術力を数値で示すことであり客観的な指標となる。それだけに、多くの消費者にとって大きな意味を持つことでもある。

 もっと遡れば、2012年11月、米国環境保護局(EPA)が韓国の現代自動車とグループの起亜自動車を、米国において燃費を誇大表示しているとして訴えた事件もあった。約90万台が対象となり、制裁金は当時のレートで114億円程度に及ぶ巨額の賠償責任を課せられた事件であった。訴訟社会の米国で不正を起こせば、想像以上の負担が経営を圧迫するという典型的な事例であることを証明した。

 この現代自動車事件以降、続々と明らかになった自動車各社の不正事件であったが、各社がそれぞれの事件を他山の石として生かさなかったことになる。