一方、LIBは原理研究、基礎研究、そして技術開発から実用化に至るまで、旭化成やソニーなどの産業界の努力によって確立され、日本の存在感を大きく世界に示した。そのLIBも、2009年までは知財の効力も手伝い日本勢が強かったものの、それ以降は知財効力の低下や失効等により、韓国勢が、そして近年は中国勢が大きく躍進している。

 今後の次世代革新電池の実現に向けても、日本発の実用化が期待されている。産業競争力を高める意味では、基礎研究段階から実用化段階に至るすべてのステップで、強い知財を確立することが肝要である。ニッケル水素電池で味わった苦汁を糧に、強力かつ賢明な知財の確立こそがその原動力となる。

次世代革新電池の成果に結びつける基礎研究のマネジメント

 上の図は、日本における基礎研究のあるべき姿を示したものである。文科省管轄国家プロジェクトの「次世代革新電池研究戦略」検討委員として、2014年から関わった際に、当プロジェクトに筆者が提言したものである。

 それまでの国家プロジェクト運営基準と言えば、「研究費用の次年度繰越は不可」「研究プロセスの軌道修正は不可」「成果に応じた研究費用の配分は未実施」など、柔軟な推進体制がとられていないどころか、非常に厳しい制限が課されている実態を知り唖然とした。

 基礎研究のような、柔軟でしかも定説や固定観念に囚われない姿勢こそ、成果を生み出す原点になっているのであるが、上記のような締め付けが続く限り、大きな成果は期待できないのではないだろうか。

 LIBが生み出された背景には、民間企業での柔軟な考えと軌道修正の英断、そしてそこに関わった研究者の熱き想い等があった。全固体電池やリチウム酸素電池、多価イオン電池など、次世代革新電池の候補はいくつか推進されている。

 日本の電池産業競争力を再度力強くするためには、次世代革新電池の実現は日本にとっての生命線ともなる。しかし、出口の見えない、あるいは現実的ではない原理や機構の電池研究では社会に貢献できるものにはならない。基礎研究も、結局は社会に貢献することで真の価値となる。そうなるためにも、研究路線の軌道修正や方向転換等の柔軟性を閉ざしてはならない。

■訂正履歴
本文中、「ニッケル水素電池搭載の電動工具が選ばれており」としていましたが「LIB搭載の電動工具が選ばれており」の誤りでした。お詫びして訂正します。本文は修正済みです。 [2017/9/28 11:30]