次に、車載用を眺めてみよう。トヨタのハイブリッド車(HV)には、ニッケル水素電池とLIBが車種によって使い分けされている。HVの場合に適用される電池は2kWh以下であり、容積的に比較的コンパクトで済むことからニッケル水素電池でもある程度可能となる。

 しかし、プラグインハイブリッド車(PHV)になると電池容量は5kWhを超えるものが大半だ。2012年に市販されたトヨタの「プリウスPHV」では4.4kWhのLIBであったが、16年にフルモデルチェンジした同PHVでは、電動走行を60km以上確保するため、8.8kWhのLIBを搭載している。

 9月に発表された日産のEV「リーフ」では、40kWhのLIBが搭載されている。これもLIBであるがゆえに可能となったものである。ニッケル水素電池で同体積を搭載すれば、せいぜい20~25kWh程度にしかならず、航続距離もモード燃費で半分くらいの200kmほどにしかならないだろう。とすれば、現在、世界規模で進むEVシフトの波は起こっていなかったはずだ。

 欧州勢がディーゼル車やガソリン車から急速にEVシフトを進めようとしている機運がある。LIBの質量エネルギー密度と体積エネルギー密度が向上し、かつコスト低減が進んだことが電動車の普及拡大に大きく寄与している。

 2014年には青色発光ダイオード(LED)が、「照明革命により世界を照らした」という理由で、ノーベル物理学賞を受賞した。これと照らし合わせれば、LIBは「革新的エネルギーシステムにより社会を快適にした」と表現できそうである。

LIBの負のインパクト

 これは何といってもLIBの事故やリコール問題につきる。これまでもモバイル用や車載用、そして定置用で多くの事故やリコールを見てきた。記憶に新しいところでは、1年前に起きたサムスン製のスマホ「Galaxy Note 7」の250万台に及んだリコール。高容量を限りなく追及したLIBがもたらした大事故であった。

 車載用でも2010年以降から多くの事故が伝えられてきたが、いまだに続いているのも事実である。中国でのEVやEVバスでの火災事故や、米テスラの「モデルS」でも少なくない火災事故が明らかにされてきた。

 かようなことから、LIBの負のインパクトがなくなるように努力する必要がある。このような事故が続く限り、負のインパクトは拡大する方向に向かい、社会的非難も免れない。もっともその前に、事故を発生させたLIBメーカーは淘汰され、市場から消えることになるだろうが。

持続的社会を形作る電池社会と産業競争力

 革新電池の研究が社会にもたらす期待は大きい。過去の事例を紐解けば、ニッケル水素電池は日本の産業界で技術が確立され、1980年代には世界に先駆け事業化が実現された。日本のみがダントツで強い産業構造を形成し、ニッケル水素電池メーカーは優良なビジネスを展開していた。しかし以下の図に示すように、知財では米国のベンチャーの広範な特許網に敗北し、全メーカーはロイヤルティを払わざるを得ない屈辱を味わった。

過去に学ぶ日本が直面する課題