車載用国連規則で認証が義務付けられるECE R-100.02 Part.IIの9項目の試験法にも釘刺し試験は含まれていない。上述したように、GB規格には当初含まれていたが、後に除外された。しかし、日系自動車各社や電池各社の大半は自主的に釘刺し試験を実施する。さらに、各社独自の試験法や基準、限界試験を導入し開発にあたっている。国連規則や中国GB規格はクリアして当然の義務教育であるので、これに甘んじているだけではグローバルビジネスとしては不十分である。
日系勢が進めている各社の自主的な、そしてより厳しい試験法と基準、それに限界試験を付加する高等教育をクリアすることで、安全性と信頼性が一段と高い次元で実現する。
以下の図は、エスペックが運営している宇都宮事業所の「バッテリー安全認証センター」の機能と国連規則を挙げたものである。国連規則やGB規格をワンストップで提供できる機能を有している。試験項目によっては、中々クリアできないLIBもある。それを短期間で効率的に改善開発するために、自動車業界や電池業界に貢献するビジネスモデルを提供している。それのみならず、各社の高等教育をクリアするためのオーダー試験についても随時対応できる機能も有している。
中国系LIBを調達する日系企業への提言
日系自動車各社が、中国市場で中国製LIBを調達する動きもある。日産自動車はCATLのLIBを採用すると既に判断した。ホンダも近い将来に向けた調達のための共同開発をCATLと開始している。トヨタ自動車のCATL詣でも報じられている。
他方、日本市場でも定置用途や太陽光発電用の蓄電システムとして中国製LIBを調達するビジネスが急速に進んでいる。その理由は、この分野でのLIBシステムの価格差が要因になっている。日系勢のLIBと中国系勢のLIBの価格差が2倍以上もあるためだ。
そこで中国系LIBを調達する日系企業、特に自動車メーカー以外の業界に対して提言したい。LIB各社の性能仕様は顧客に提出されるが、供給側にとっては支障の無い仕様表現であることが多い。ましてや過酷な条件や限界試験の際の事象など記述する訳もない。それを要求しても実施するかどうかも協議をして見ないと不明だ。書面だけの仕様で判断するのは非常にリスクを伴う。
日本市場でもこれまで、中国製モバイル用LIBとモバイル充電器の事故が多発してきた。特にモバイル充電器に関しては度々、テレビのニュースでも報道されているほど頻発している。車載や定置用の大型LIBでは、人命に関わる事故にもつながりかねない。
中国製LIBやモバイル充電器を導入しようと検討を進めている各社においては自主的に、かつ過酷な試験法の適用で安全性と信頼性を確保していただきたい。自社で試験設備を導入して対応するには、時間と投資がかかり非効率である。また、試験のノウハウも重要なので、エスペックのような受託試験機能や認証センターを積極的に活用いただきたい。それが、日系企業の安全性・信頼性を担保し、優れた品質性能を具現化する大きな手がかりとなるのだから。
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