中国市場における変化点と展望

 先の7月26日のコラムでも、中国において2020年からエコカーに対する補助金がなくなった場合のケーススタディを示した。それもさることながら、以下の表に示すように現時点で様々な異変ともいえるべき事象が生じている。2020年の補助金ゼロ化がもたらす影響は計り知れないと思う。

中国市場における気になる動き
中国市場における気になる動き
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 EV各社の資金繰り悪化によるしわ寄せが電池業界に及んでいる。昨年からの補助金減額の影響で、EV各社のLIBサプライヤーへの支払い遅延で経営が悪化する電池企業が既に現れている。例えば、CATL、BYDに続く中国3位メーカーであるOptimumNano Energyは、18年7月から半年間のLIB生産停止を決断した。その他、CATLの利益大幅減少、LIBメーカーの40%がマイナスのキャッシュフローであるなど、厳しい状況に陥っている。

 そこに追い打ちをかけるように中国政府は18年、航続距離300km以下のEVについては補助金の減額幅を前年対比で最大58%減にすることを決定した。航続距離が300km以下のEVが約50%と主流を占める中国ローカルのEV各社、そしてそこにつながるローカルのLIBメーカーには必ずや淘汰の波が押し寄せることになる。

 CATLはこれまで生き馬の目を抜くような成長拡大路線を遂げてきた。日系自動車各社、部材メーカーのCATL詣でも多くのタイミングで報道されてきた。トヨタ自動車の頻繁なCATL訪問協議、日産自動車においては中国で生産するEVでのCATL製LIBの調達決断、ホンダは調達までの決断はしていないものの、中国で生産する電動車(xEV)への調達を目指すためのLIBの共同開発と、日本の自動車トップメーカーが大きな期待を寄せている。

 ご他聞に漏れず、LIBの部材事業を展開する日本の化学メーカー各社もCATL詣でを行ってきた。正極材料、負極材料、セパレータ、電解液の四大部材を中心とした事業は日本のお家芸であったのだが、2015年以降は特に中国ローカル部材メーカーが躍進してきた。

 日系部材メーカーの強みはハイエンドを主体にミドルレンジ級の部材ビジネスの展開を図っていることである。一方、中国ローカルの部材業界はローエンド系からミドルレンジ系のビジネスモデルという格好で、日系のビジネスとはターゲットがやや異なる。

 しかし、CATLの日系部材メーカーとのビジネス協議では、CATL側が中国ローカル部材メーカーの価格をちらつかせ、日系部材メーカーに価格交渉を迫って有利に進める姿勢を示している。そういった状況を頻繁に目の当たりにして、ビジネス商談から引き下がる日系メーカーが増えてきたとされる。

 CATLのこのようなビジネススタンスで日系部材業界が供給しない状況になれば、ハイエンド系を採用する日韓電池メーカーとの技術に再び優位差が生じることになる。知財も含め、価格交渉でもパートナーとしての意識をもち、交渉相手に対する丁寧な姿勢を示さないと、日系のCATL離れが進みそうな気配がある。

 サムスンSDIやLG化学がLIB事業を伸ばしてきた最も大きな原動力の一つに、日系部材メーカーとのパートナーシップ意識をもって、双方のWin-Winを構築する信頼関係を築いてきたことがあげられる。CATLの対応次第では、その勢いに急ブレーキがかかることも予想され、今後に注目が集まる。