燃費・排ガス検査の不正問題で記者会見を行うマツダの菖蒲田清孝取締役専務執行役員(右)と向井武司常務執行役員(写真:つのだよしお/アフロ)

 2017年10月12日のコラム「相次ぐ法令遵守違反、未然に防ぐ3つの要件」では、神戸製鋼所のデータ改ざん問題、および日産自動車の検査システムでの法令違反を採り上げた。日本のみならず世界的に波紋を呼んだ問題であっただけに、その反響は大きく、特に神戸製鋼のデータ改ざんに関しては、直後の10月15日のテレビ朝日で生放映された「サンデーライブ」にゲストコメンテーターとして招かれ発言したほどだった。

 もう一つの話題として採り上げた日産自動車の検査不正問題は17年9月に発覚した。製品出荷前の完成車検査で、資格を有しない社員が担当していたことが明るみに出た。続けてスバルでも同様な問題があり、業界内の大きなスキャンダルとして社会に大きな衝撃を与えた。その後、自動車業界では棚卸が相次ぎ、自浄作用が機能するかに見えた。

 自動車業界ではこの検査不正問題とは別に、燃費不正問題が既に浮上していた。燃費不正問題は2015年9月に発覚した独フォルクスワーゲン(VW)に端を発した。VWのスキャンダルは巨額な補償問題へと発展し、全世界での販売に大きな悪影響をもたらした。それのみに留まらず、ディーゼルエンジンに対する厳しい逆風も吹き荒れ、その対応の一環として同社は大胆な電動車シフトへと舵を切った。

 同社は2025年には、自動車全体の25%をプラグインハイブリッド車(PHV)または電気自動車(EV)にする方針を発表している。同じドイツ勢のダイムラーとBMWも、口裏を合わせたように同等な目標を掲げている。ディーゼル燃費不正スキャンダルに対して、電動車シフトは大きなイメージアップとして利用されているような節もある。

 日本では、16年に三菱自動車の燃費試験データ改ざん問題が発覚し、同年にはスズキも法令で指定されていた方法ではない独自の燃費測定を行っていたことが発覚した。

 一方、2018年になると、スバルが製品出荷前の検査工程で燃費・排ガスデータを書き換えていた問題が発生した。これがきっかけとなり、日産自動車では燃費・排ガス測定の抜き取り検査で5月から6月にかけて不正が行われていたことが確認された。調査台数2187台分のデータを調査した結果、何と約54%に相当する1171台に不正があったという衝撃的な事実である。

 再発防止策として打ち出した法令遵守の社内教育をしたはずの日産で起きただけに、ことさら衝撃的な問題と化した。燃費・排ガス問題は、その後も明るみになった。8月9日には、マツダ、スズキ、ヤマハ発動機でも同様な問題が発生していたことが公表された。正に自動車業界の品質神話は崩壊した。

 こうした事件と言ってもおかしくない一連の問題が生じたことで、自動車業界内では他山の石として教訓になるだろうと考えていた。しかし、その後も不正問題が続出し、止まることを知らなかった。

 逆に、これら問題を引き起こしていないのは、トヨタ自動車、ダイハツ、ホンダのみ、すなわちトヨタグループとホンダだけとなっている。ではなぜ、この2グループは問題を引き起こしていないのだろうか。

 8月10日の日本経済新聞によると、トヨタでは燃費と排ガスの検査装置を自動化することで、人の手を介さずに結果が出るシステマティックな手法を導入している。同じグループのダイハツが同様なシステムを導入しているかどうかは不明だが、グループ内で水平展開されている可能性は高いだろう。

 ホンダの場合は、トヨタと同様なシステムを導入しているかどうかは不明だが、導入していなくても生来の生真面目さや実直な企業文化があるから、そこまでの不正が起こらないような風土があるだろうと筆者の経験からは映る。

 創業者の本田宗一郎は、曲がったことは大嫌い、また理不尽で論理が伴わないのも大嫌い、常に実直で真っ向から立ち向かうエンジニア魂の持ち主であった。そういうDNAが時代を超えて継承され、自ずと自浄作用が働く企業文化になっていると思える。