新工場の生産キャパは24GWhとされ、1700億円規模の投資とのこと。このキャパは、BYDが17年に生産する新エネ車の10倍以上の販売台数がカバーでき、BYDのプラグインハイブリッド車(PHV)換算で120万台に相当するという。このため、自社内ビジネスに限らず外販ビジネスを行うのが前提となる。

 この新工場以外にも、車載LIBの工場建設で地元政府と合意しているとのことで、1500億円規模の投資で新たに20GWhのキャパを構築しようとしている。既存の広東省の2工場は16GWhの生産キャパを有していることから、2020年には全体で60GWhの能力を持つことになる。この急速なキャパ拡大を見ると、どうもCATLとの覇権争いのような数字競争のようにも映る。

 と言うのも、現在の中国の新エネルギー車(NEV)規制が必ずしも論理的でなく、かなり歪んだ法規になっていることで、その法規制がそのまま上手く浸透するとは思いにくいからである。もしそうであるならば、CATLにしてもBYDにしても、その思惑が軌道に乗らないリスクもあり得るだろう。

歪んだ政策には歪が生じる

 中国NEV規制の矛盾を考えてみる。NEV規制は米国ゼロエミッション車(ZEV)規制を見習った法規で、下の表のような内容である。すなわち、自動車各社に対しエコカー導入を強制するものだが、対象は年間3万台以上を生産する企業となっている。エコカーで対象となるのは、PHV、EV、そして燃料電池車(FCV)である。

 中国内でのエコカーの実態はカテゴリーによって大きく異なる。PHVはエコカーの対象になっているものの、所詮はハイブリッド車(HV)の延長上の車である。中国政府はエンジンがあるHVは、ローカルの自動車メーカーでは日本勢に敵わないことからエコカー群から外している。PHVもHVと同様な難度であるから、中国のローカルメーカーがPHVを開発し生産するのはハードルが高い。その証拠に、PHVを生産販売しているのはBYDのみという実態からは、今後もPHVを生産販売するメーカーは出現しにくいものと見られる。

中国のNEV規制は米国のZEV規制をベンチマークにしている
中国のNEV規制は米国のZEV規制をベンチマークにしている
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 FCVは更に難度が高い。部品点数の多さ、コストの高さ、水素を高圧(350~700気圧)で扱うこと、各部材やコンポーネントの10年以上にわたる長期信頼性の確保など、EVに比べると新規参入は極めて厳しい。

 全世界で市販に漕ぎ着けたのは、トヨタ自動車、ホンダ、韓国現代自動車の3社のみである。トヨタとホンダは米国での販売も累積で500~700台規模となったものの、現代自動車は1台も販売できていないという大きな差が生じている。トヨタとホンダは基礎研究時代から数えると、おおよそ30年の歳月をかけて実用に供した。

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