この試験センターを開設するにあたり、ビジネスで先行していたテュフズードとの協業を検討した。ドイツの自動車業界から絶大な信頼を得ていたテュフズードが大規模でしかも危険な試験を扱う際の建屋や試験設備で先行していたことから、エスペックが単独で事業展開するよりも協業することで、より質の高いビジネスを各業界に提供できるという判断に至ったからである。

 もっとも、テュフズードにとっても、日本国内でのビジネスを展開するには、自動車業界や電池業界とのネットワークが十分でない。このために、これら業界内で知名度の高いエスペックとの協業はWin-Winを築く可能性の高いコンビネーションと認識していた。

 筆者も2015年1月には、ミュンヘンのテュフズードを見学すると共に、意見交換を行った。その際に、先方のビジネスに対する真摯な取り組み、提案型のビジネスモデルを通じた自信とプライドが直接実感できた。

 宇都宮の試験センターには、現在、ドイツのテュフズードから若手のエンジニアが常駐している。仕事にも熱が入り、エスペック社員と強力なタイアップを図っており、しかも日本の生活を十分に楽しんでいる。

 ところで、ドイツのテュフズードは本年150周年を迎えた。1866年に22人で、蒸気ボイラー技術の安全性を担保する最初の検査協会をマンハイムに設立した。その後、新技術の信頼性を裏付ける認証機関として成長発展し、現在は2万人を超える社員を有す世界のテュフズードになっている。

 設立150周年の記念イベントが、先日7月7日に六本木のリッツ・カールトンホテルで執り行われた。エスペックの役員、幹部社員と共に、筆者も出席した。テュフズードの会長、役員ボードメンバーが大勢出席のもと開催された記念イベントには約200人が参加した。

 テュフズードの150年のリビューをいただき、社会に貢献してきた背景、そして今後のビジネス社会におけるサイバーリスクやそれに対するビジネスモデルへの取り組みなど、ホットな話題も織り込まれた。

 13時から17時まで行われた一連のセミナーであったが、テュフズードからの最後のプレゼンでは、エスペックとの協業ビジネスを採り上げ、両社が質の高いビジネスモデルを展開中であることを参加者に説明してくれた。もちろん、これはエスペックがそのように働きかけたわけではなく、テュフズードの自主判断でのプレゼンであった。

協業をうまく進めるには

 このように、昨年9月からスタートした日独連合の協業ビジネスは、すこぶる良い関係で推移している。ではなぜ、良いビジネスが展開できているのか、それは前述したその1~3のうまくいかなかった原因の裏返し(その4~6)である。

  • その4:お互いの立場を十分に理解し時間をかけてコミュニケーションを図っている。
  • その5:双方の立場を理解し、Win-Winの関係を築くための努力を図っている。
  • その6:双方の相手に対してリスペクトする気持ちを持って、協業が成功するシナリオ作りをリアルタイムで進めている。すなわち、経営陣同士、実務者間同士で真の信頼関係を築くための努力を怠っていない。

 以上、韓独協業、日独協業の事例を紹介したが、これはひとつの事例であり、それがすべてを語るものでは全くない。ただし、成功と失敗の分岐点には、それなりの理由や原因があることを述べておきたい。