結局は、双方の思い入れが交錯し、そこから亀裂が生じたように思える。すなわち、ボッシュは自動車の電動化ブームを大きなビジネスチャンスとして捕らえ、電動システムでも揺るぎないティア1を目指していた。LIB事業は傘下にもっていなかったので、サムスンSDIとの協業を始めたのだが、電池事業も自社技術として取り込みたい思惑が既にあった。

 だからこそ、ボッシュにとってのサムスンSDIの車載電池事業は、協業、合弁と言いながらも、完全にボッシュが主導権を担う関係、もっと言えば、サムスンSDIをボッシュの下請けのように扱い、サムスンSDI側は、そういう指示や言動を受ける形で進めていかざるを得ないような状況になっていった。

 一方、サムスンSDIとしてはこのような構図を全くと言っていいほど考えていなかった。電動化システムの要はLIBが最優先であり得るのだから、LIBを中心にした大きなビジネスモデルを考え、サムスンSDIが主導権を握るとまでは言わないにしても、少なくとも上下関係のない対等な協業関係を築こうとしていた。

 両者間の溝は深まり、合弁事業は4年で解消することになる。結局は失敗に終わったこのビジネスモデルにおいて、成功に至らない不足していた原因が3つあると考える。

  • その1:お互いの立場を十分に理解しコミュニケーションをとって、ギャップができない、あるいはギャップが最小限になるような努力が不足していた。
  • その2:双方の思惑に強いものがあり、その思惑はお互いに相容れない相反事項となって引きずられていった。
  • その3:双方の相手に対してリスペクト(尊敬)する気持ちをもって、協業が成功するシナリオ作りが十分に実践できなかった。すなわち、あくまでビジネスライクであり、上下関係の立場をとりつつ、真の信頼関係が築けなかった。

日独の協業はうまく展開できるか

 結局は個社間の課題としての話ではあるが、前の事例に近いビジネスモデルでは、ボッシュとジーエス・ユアサコーポレーション(GSY)、三菱商事の3社で協業する車載用LIB事業がある。Lithium Energy and Powerと命名し、2013年に設立した。

 ボッシュがサムスンSDIの代わりにGSYとパートナー組んだと言ってしまえばそれまでだが、ボッシュはサムスンSDIとの協業での失敗を経験したこと、GSYはサムスンSDIとボッシュとの協業を垣間見ていたことから、双方には教材とすべく実例があり、そこを克服していくことは可能だろう。

 もうひとつ、筆者が関わっているビジネスモデルを紹介しよう。ドイツの企業で、工業製品の試験および認証を主なビジネスとするテュフズードとエスペックとの協業事例である。

宇都宮の「バッテリー安全認証センター」

 2015年9月24日のコラムでも紹介したが、同年9月17日に開所式を行ったエスペックの「バッテリー安全認証センター」におけるテュフズードとの協業モデルである。車載用電池の安全性・信頼性を評価するこの試験センターは、エスペックとしても新しいビジネスモデルという形で、自動車業界や電池業界に貢献するという大変重要な意味が込められている機能である。

耐火性試験結果

 各業界の期待とニーズが大きく、特に今年に入ってから委託試験を多々いただいており、試験センターはフル稼働に近い状況でビジネスを展開中である。車載用電池の国際認証: ECE R-100 Part IIの安全性試験をクリアして認証を取得しないと、xEV(電気自動車、ハイブリッド車、プラグインハイブリッド車、燃料電池車の総称)の販売ができないという制度がスタートしたことが、その背景にある。