有機EL(エレクトロ・ルミネッセンス)のビジネスが着々と進んでいる。スマホやタブレット用には、韓国サムスンディスプレーが小型有機ELパネルの供給で独占状態にある。

 これまで有機ELを採用してこなかった米アップルも、いよいよ2017年秋に発売するiPhoneの新モデルから採用することを決めている。スマホの世界では、液晶から有機ELへと主戦場が変化する方向に進んでいる。

 一方、有機ELテレビの市場も徐々に拡がりつつある。しかし大型有機ELパネルの生産メーカーは、現在、韓国LGディスプレーのみである。最近、ソニー、パナソニック、そして東芝が有機ELテレビの参入を明らかにした。いずれも有機ELパネルはLGディスプレーからの調達を決断した。

 サムスンディスプレーもLGディスプレーも、独占状態で供給契約を結んでいるため、完全な売り手市場となっており、プレミアム価格での供給が続いていると思われる。その結果、特にサムスンディスプレーでは、17年1~3月期に有機EL事業が約1000億円規模の利益をたたき出したという凄さである。

 本来、先端技術が得意であった日本が、こと有機ELに関しては全く後塵を拝している。この背景には、多くの原因が介在すると考えられるが、韓国が完全に支配しているこの力関係を真摯に受け止め、きちんと分析して教訓にすることが、今後の日本の製造業における指針となるはずだ。

 このような状況は、とりわけこれから市場が急速に拡大すると目されている、モバイル用リチウムイオン電池(LIB)や車載用LIBにおいても相通じるものがある。有機ELとLIBに共通する課題の発生原因を考慮すれば、LIBが有機ELの二の舞を演じない可能性が高くなる。今回は、有機ELが現状の勢力図となってしまった背景を探ったうえで、LIB業界が取り組むべきことについて考えてみたい。

液晶に慢心した日本勢ディスプレー業界

 日本が液晶事業で先行していた2000年代前半、韓国サムスンSDIでは有機ELの研究が始まっていた。サムスングループにおける次世代ディスプレーの研究開発と言う位置づけであった。もっとも、有機ELに対して日本勢の研究開発も既に始まっていた。

 サムスングループではその時点で、大型液晶パネル、中小型液晶パネル、およびプラズマディスプレー(PDP)の事業を運営していた。スマホが出回る以前の携帯電話においてはすべてが液晶パネルを搭載し、またサムスンのテレビ事業では液晶パネルとプラズマパネルを用いた製品、およびブラウン管テレビも市場に供給していた時である。

 そういう最中の有機ELの研究開発はある意味で、いばらの道でもあった。有機ELの高画質、低消費電力は魅力があるものの、いかんせん生産工程においての歩留りの低さや、高コストというハンディを抱える中で、サムスングループの中でも、「液晶と比べると実用化は困難だろう」という反対意見が少なからずあった。

 日本勢ではソニーやエプソンなどを中心に有機ELの研究開発が進められており、その中でソニーは2007年に11インチの有機ELテレビを市販した。しかし、製品競争力の低さと高価格の壁が邪魔をして、結局、有機ELテレビとパネル事業から10年には撤退した。エプソン等も同様に撤退したことで、日本勢の影はなりを潜める格好となった。

 サムスンSDIにとっては、ライバル企業の日本勢が撤退したことで、競合がいなくなったという追い風が吹いた。だが一方で、有機ELワールドを形成するための仲間とも言える同業社が去ることで、単独で有機ELの世界を開拓せざるを得ない立場に追い込まれたとも言える。