前回は「テスラのEV苦戦で考える新規参入のリスク」といったタイトルのコラムを掲載した。その後半には、日本企業のビジネスモデルを拡大する3つの方向性について述べた。

 一つは、既存事業で独壇場にある先端製品においては、継続的に他社の追随を許さない断トツ製品に進化させる開発プロセスを構築すること。二つ目は、ハイエンド系からミドルレンジに至る幅広い価格帯でのグローバルな顧客開拓の必要性。そしてもう一つが、新たなビジネスを形成するための先行研究開発投資の必要性と確度の高い技術経営とした。

 日本政府が主導してきたように、「科学技術立国」「知財立国」「電池立国」と言う掛け声が多々発せられてきた。しかし、現実はどうだろう。これを実際に具現化するためには大きな障害や課題が山積しているのではないだろうか。

 例えば、日本企業のR&D投資は海外勢と比べるとトップ集団には位置していないこと、一方、アカデミズムでは研究資金の獲得や若手研究者の雇用でも多くの課題を抱えていることなど、先行きの不安感は否めないのが実情だ。

企業の研究開発環境

 ホンダのジェットビジネスや燃料電池車を実現させた30年にも及ぶ研究開発、あるいは三菱電機が実用化したSiCパワー半導体の30年越しの研究開発など実現に至った好事例はある。多くの紆余曲折があっての成果であるが、どこの企業でもこれほどの長期間に渡って投資を続けられるわけでもない。現在のホンダでも、電動化や自動運転の開発は喫緊の課題だ。そういう中で、向こう30年先を見据えた研究に投資する余裕はほとんどない。

 一方、このような事例とは裏腹に、日本の研究開発が見劣りしていることを、日本経済新聞は5月3日の1面トップ記事として報道した。それによれば、この10年間で日本企業の存在感がグローバルで低下しているとのこと。

 2007年には、研究開発費比較で世界100位までに日本勢が24社あったのに対し、17年には17社にまで減少した。日本のトップを走っていたトヨタでさえ、07年の3位から17年には10位にまで低下した。同様な見方では電機メーカーの後退が顕著で、パナソニックは15位から36位、ソニーは18位から35位になった。

 他方、順位を上げてきたのがIT関連企業で、1位が米アマゾン・ドット・コム、2位が米アルファベット、3位が韓国サムスン電子、4位に米インテル、6位に米マイクロソフト、7位に米アップルと、トップ10に6社が占めた。

韓国企業の大規模R&D投資

 サムスングループ以外でも、韓国企業の果敢なR&D投資が顕著になってきた。4月20日、ソウル江西(カンソ)区麻谷(マゴク)にLGグループの大規模な研究開発センター「LGサイエンスパーク」がオープンした。総額4兆ウォン(約4000億円)を投資して建設したセンターの敷地は、サッカー場24面分に相当する17万平方メートルとのこと。延べ床面積は111万平方メートルと、韓国最大の研究開発センターとなった模様。9~10階建ての研究棟が20棟あり、年間4兆6000億ウォン(約4600億円)の研究開発投資をして雇用創出と新事業開発に拍車をかけるとも。

 文在寅(ムン・ジェイン)大統領は開所式典に出席したとのことで、「今後は米シリコンバレーを羨まなくてよさそうだ。本研究センターは韓国の革新成長の未来であり、民間主導の革新成長の現場だ。政府としても新技術、新製品を妨げる規制を解除する」と力強く強調したと言う。また、大統領は「任期内に、基礎研究予算を現在の2倍の2兆5000億ウォン(2500億円)に拡大する」と発言した。

 このセンターには、LG化学、LG電子、LGディスプレイなどのグループ主要系列会社の研究員2万2000人が入居する。LGグループの研究開発を統括し、未来の成長エンジン発掘の役割を担うミッションで新たな出発につなげる。中小・ベンチャー企業のための「オープン研究スペース」や、国内外研究機関の研究空間「ジョイントラボ」も備えている。