その時点では、ホンダの中国でのEV発売の話はおろか、ホンダがEVを商品化する発信もなかったため、この話を聞いた際には、日産自動車のEV用なのかと想像した次第である。なぜなら、日産は14年からEV「ヴェヌーシアe30」を中国で販売している。その次のEV用での採択とも受け取れたからである。

 しかし、その後の動きを勘案すると、とある日系自動車メーカーはホンダなのではないかと想像したくなる。また、既にEVを販売している日産のLIBに関するサプライチェーンは、新たにEVを販売するホンダの状況とは異なるように見える。

 トヨタ自動車もEVを中国で生産することを検討中とのこと。今後のトヨタの中国市場でのエコカー戦略にとっても、電池調達は制約条件の多い中で解を見出すことが求められている。

 トヨタの中国製HVには常熟に生産拠点をもつプライムアースEVエナジー(PEVE)のニッケル水素電池を適用している。一方、中国におけるエコカーに定義されているPHVとEVもトヨタは中国での生産販売を計画している。そこにはLIBが適用されるが、PEVEではLIBの生産機能を持っていないので、大連のパナソニックからの調達という選択肢がある。しかしNEV規制の縛りを考えれば、ホンダと同様、トヨタもCATLに食指を伸ばす可能性は否定できない。

 いずれにしても、欧米自動車メーカーも含むすべての外資系自動車メーカーにとって、電池調達戦略に対しては厳しい制約がつきまとう。

韓国の自動車メーカーと電池メーカーに課される大きな課題

 韓国現代自動車にしてみれば、南京にLIB生産拠点を構えたLG化学からLIBを調達するビジネスモデルを想定していた。しかし、バッテリー模範基準を取得できなかったというLG化学の誤算も加わり、双方のビジネスモデルが破たんする格好になりつつある。

 現代自動車の中国市場でのシェアは7%強である。16%強のシェアをもつ独フォルクスワーゲン(VW)、16%弱のシェアを有す米ゼネラル・モーターズ(GM)に続く3位を維持してきただけに、非常に重要な市場であることに違いはない。

 しかし、韓国に配備された地上配備型ミサイル迎撃システム(Terminal High Altitude Area Defense missile: THAAD )の政治的背景の影響から、エコカーライセンス取得が非常に厳しくなった。既存ビジネスでの急降下が起こっている中で、今後の中国エコカービジネスをどう展開するのか、その戦術が問われている。

 参考までに5月4日の韓国経済新聞によれば、現代経済研究院の調査ではTHAAD配備による各種経済報復の影響が、17年だけで8500億円程度に上る予測だと言う。

 一方、LG化学の今後の展開は、ポーランドに建設したLIB生産拠点を中国拠点より大きな意味合いをもたせることになるだろう。同様に、中国のバッテリー模範基準認証を取得できていないサムスンSDIは、西安に計画していた工場の第二期増設計画を保留した模様である。そして、LG化学と同様、生産拠点を欧州のハンガリーに建設することで、欧州勢の自動車各社との更なるビジネスを模索して方向転換を図ることになろう。

 確かにVW、独ダイムラー、独BMW、仏ルノーは今後、PHVやEVを17年から急スピードで商品化することを計画している。その分、車載用電池メーカーにとっては大きなビジネスチャンスではある。

 そこで韓国の2社は大きなビジネスモデルを考えているが、従来の構図と異なることは、競合相手がこれまでは日系電池各社であったのに対し、CATLがVWやBMWと供給契約を成功させているように、ここでもCATLが存在感を示していることだ。韓国2社はいかにして欧州ビジネスで迎え撃つかの強い戦略が重要となっている。

 このように、電池業界の勢力図は日韓中各社がグローバル市場で直接対決する形となる。今後、各社の生き残りを賭けた激しい戦いが繰り広げられるだろう。その中で、中国政府が打ち出す大胆な政策、そしてモバイル用LIBがそうであるように、車載用LIBでも中国電池メーカーが価格を支配する事業戦略構造などに、どう対峙していけるかが生き残りの条件となろう。