参入障壁度の分類と対応

 上記および関連事業の参入障壁レベルをマップにすると、以下のような図になる。

新規参入度と差別化との相関マップ

 参入障壁が高くないとして、中国では新規参入組のEVメーカーや車載用LIBメーカーが林立した。しかし、2010年以降に多発した中国でのEV火災事故で人命を奪った事故は記憶に新しい。すなわち、製品によっては長期信頼性や耐久性という時間軸で考える指標が更に必要ということである。

 先端技術やハイエンド系が得意な日系企業にとって、持続可能な成長事業を推進する戦略として、以下の3つのプロセスのいずれかが必要であるだろう。あるいはすべてを実行できれば、競争力は格段に向上すると考える。

①既存事業で独壇場にある先端製品においては、継続的に他社の追随を許さない断トツ製品に進化させる開発プロセスを構築する。

②ハイエンド系を武器に進めてきた製品を、新興国市場でそのままビジネスを行ってもうまく進めることができないことを実証した事例は山ほどある。アップルのスマホiPhoneでさえ、ハイエンドからローエンドまでラインアップを揃えて中国市場を攻略してきた。それでも、中国のローカルメーカーの追い上げで中国市場ではシェアを徐々に落としつつある。

 EV事業や車載用LIB事業が最も活発な中国市場では、試験機器製品もローカルメーカーが低価格品で牛耳ってきた。筆者が籍を置くエスペックでも、全世界の顧客開拓のために充放電サイクルテストのビジネスを確立すべく、新規参入ではあったが製品開発につなげた。当初より、先進国をターゲットにしたハイスペック製品でのビジネスモデルを構築したが、その製品で中国や韓国の顧客開拓をしようとしても、高価格帯製品では検討の土俵に上がらないことを筆者も幾度となく経験してきた。

 中国や韓国市場に攻勢をかけるため、昨年から各市場に応じた製品戦略を打ち出し開発に取り組んできた。本来、ハイスペック製品の開発ができるはずだ。取り組みの結果、2017年度には、低価格帯製品の開発に漕ぎ着けた。開発側の多岐に亘る努力が実り、ハイスペック版の半値に近い45%のコストダウンを実現した。

 この価格帯と、本来当社が強みとしている試験環境や電池の温度制御、信頼性、耐久性、低故障率を武器に付加価値を訴求すれば、中国や韓国市場でのビジネスを構築できる可能性が一段と高まることになる。

③上記の①や②を推進しつつも、いずれ時間が経過すればフォロワーが追い付くことは必至と念頭におくべきである。フォロワーが追い付くころには、更に先の次元で新たなビジネスを形成することが求められる。そのためには、先行研究開発への投資が不可欠だ。目先の事業効率や利益率の追求はもちろん重要だが、一歩二歩先の新たな世界を築く先行投資、しかし方向性を誤らない確度の高い技術経営が重要な指針となる。

 いずれにしても客観的に俯瞰し課題を抽出して取り込むこと、そして自らビジネスをリードできる力強い経営戦略を構築すること、そして積極果敢にチャレンジすることが、今後一層求められているのではないだろうか。

■訂正履歴
本文1ページ目で、「ジャパンディスプレイ」としていましたが「JOLED」の誤りでした。お詫びして訂正します。本文は修正済みです。 [2018/5/10 07:30]