④LIB産業

 スマホや太陽電池ほど参入障壁が低くはないが、LIB産業の勢力図も変遷している。ターンキーだけでは事業の成功に結びつかないものの、今や中国における電池メーカーは大規模から小規模まで含めると1000社ほどあるとされている。

 歴史を遡れば、2007年までは日本の電池産業強国が維持されていた。ニッケル水素電池はもとより、LIBもモバイル用、車載用で圧倒的な存在感を示していた。1991年にソニーが世界初でLIB事業を立ち上げたことがきっかけとなり、三洋電機やパナソニックも追随した。LIBの基本特許は旭化成が握るなど、知財から量産技術に至るまで日本が他を制していたからである。

 07年を過ぎた頃には、日本の有効な基本特許も効力が弱まった。同時に、日本のLIB事業をベンチマークし、競争力を追求してきたサムスンSDIやLG化学が、技術開発加速、低コスト開発、品質確保、人材スカウト、積極的なマーケティング戦略など、多岐に亘る攻略にて世界シェアをじわじわと伸ばし始めた。その煽りを受けて日本の電池産業が存在感を低下していくことになる。

 更に、2013年を過ぎると中国のATL(本社は香港、開発と生産拠点が福建省にあるAmperex Technology Limited、TDKが資本参加)がモバイル用LIBで存在感を示すようになる。特に米アップルのスマホ事業と連結し、品質と低価格路線を武器に良好なビジネスを展開するようになった。結果として、日本勢も韓国勢もシェアの低下、利益率の低下により苦戦を強いられるようになった。

 車載用LIBでも似たようなビジネス構造になってきた。三洋電機が経営破綻したころから、LG化学が技術開発に力を注ぎながら世界的なマーケティング活動を展開し、顧客獲得に実績を伸ばしてきた。サムスンSDIも同様に開発とマーケティングで存在感を示すようになると、この韓国2強と闘える日本の電池企業はパナソニックのみとなってしまった。

 そこに今度は第三勢力として中国のCATL(Contemporary Amperex Technology Limited)が台頭する。最初からグローバルビジネスを標榜する同社は、世界から人材を集め、研究開発への大規模投資、世界各国の自動車企業へのマーケティング活動、さらには中国政府の支援を受けながらの生産キャパ拡大のための大規模投資を通じて勢いづいている。昨今、独BMWや独フォルクスワーゲン(VW)、韓国現代自動車との供給契約を交わすなど、存在感を一段と増している。

 自動車メーカーとの合弁企業を形成しないフリーな立場で車載LIBを事業とする企業群にあって、2017年には、パナソニック、LG化学、サムスンSDI、中国BYDと共にトップ5のグループを形成する。

 そのCATLが日本に拠点を構える話は以前から噂としてあったが、正式に日本に進出することが、5月9日の日本経済新聞で報じられた。報道内容によれば、5月下旬に横浜市に拠点を構えるとのこと。日系自動車各社との協業をしたたかに狙う同社の戦略に対し、日系電池各社がどう迎え撃つのか、その戦略が問われることになる。

 他方、日産自動車とNECとの合弁を形成していたオートモーティブエナジーサプライ(AESC)は、日産自動車側がAESCを手放したことで、17年8月には中国のファンド会社であるGSR傘下となった。本年4月末をもって、AESCエナジーデバイスと改称し、新たなビジネスモデルを構築する。

 親会社が中国企業となったことで経営資源も潤沢になり、大規模投資が可能となった。また、中国政府がEVへの補助金を拠出する前提として策定した「バッテリー模範基準認証」、いわゆる「ホワイトリスト」にも登録され、今後のビジネスモデルの拡大が期待されている。

 AESCが中国資本傘下になったことで、中国におけるLIB産業はAESCを更にベンチマークすることで、一層力を付けていくことは間違いないだろう。日本の電池業界がそれ以上に力を発揮していかなければ、中国企業のM&Aが今後も起こり得ることを暗示しているかのようだ。