4月26日のコラム、「テスラのEV事業、三重苦どころか五重苦に?」には多くのアクセスをいただいた。また、コメントも客観的で内容の濃いものを寄せていただいた。2回連続してテスラ関連の記事を発したが、その後も様々な話題があり、また課題も浮き彫りになっている。そういった点にも触れながら、今回の表題につなげていきたい。

悪化するテスラの経営状況

 5月1日の日本経済新聞で、テスラ株の空売りがヘッジファンドの間で話題になっていると報じられた。全株式に対する空売り比率が4月中旬に20%を超えて、2016年以来の高水準に達したとのこと。時価総額が100億ドル以上の米国企業で、空売り比率が20%を超えるのはテスラと他1社のみという。電気自動車(EV)「モデル3」の生産が計画値の5000台/週と大きな乖離を示していることで、空売り勢が攻勢をかけているとのことだ。

 また、5月4日の同新聞では、同社の赤字が更に拡大していると報じられた。テスラが5月2日に発表した18年1月~3月期決算は、最終損益で780億円の赤字となり、前年同期363億円だった赤字は2倍以上に膨らんだ。四半期として過去最大の赤字を記録したとのこと。金融業界では本年3月以降、同社の経営に対する懸念がささやかれるようになったとも。課題解消につながる好材料を見通せない状況が続いている。

新興勢力に対する参入障壁の度合い

 1990年代に日本が一世を風靡していたディスプレイ、家電群、半導体、太陽電池、リチウムイオン電池(LIB)などの勢力図は大きく変わった。その背景には、後発ながらも新興勢力が技術開発、人材スカウト、大規模投資などを積極的に進めてきた現実と実績がある。結果として、参入障壁の低いものほど、韓国、台湾、中国などのアジア勢が台頭してきた。以下、産業別に具体的に見ていく。

①ディスプレイ産業

 ディスプレイ産業では、10年以上前に日本から韓国に勢力がシフトした。しかし現在、その韓国勢にも課題が突きつけられている。 

 2006年から世界トップシェアを握ってきた薄型テレビ市場を例にとってみる。2500ドル以上のプレミアムテレビは、15年に76%を占めていた韓国勢が、17年には51.5%にまでシェアを落とした。このプレミアム市場でシェアを上げたのは日系企業で、15年の19.8%から17年には44.4%まで拡大した。この中には、韓LGディスプレイが日系企業のテレビ事業に供給した大型有機EL(エレクトロルミネセンス)パネルも貢献しただろうから、幾分、皮肉な結果になっている。

 逆張り的なビジネスモデルとしてとらえれば、LGディスプレイから有機ELパネルを調達しても、それだけで有機ELテレビの付加価値が形成できるのではないということだ。調達側での画像処理技術や制御技術による差別化で、商品の付加価値を高めていることが裏付けられる。

 現在、大型有機ELパネルはLGディスプレイの独壇場だが、日本のJOLEDが開発段階から量産段階までもたついている間に、中国でも開発が進んでおり、早晩、量産に踏み切ることが予想される。LGディスプレイは、先行利益を確保しているが、今後、中国企業が低価格な有機ELパネルを供給すれば、価格下落は必至だ。となると、後発のJOLEDにとっては、どのような勝利の方程式で正解を導くかが問われる。

 一方、ミドルレンジやローエンド系では、台湾や中国での液晶パネル事業が技術の進化と低価格化の実現で台頭してきた。中でも、低価格を武器に勢力拡大を図ってきたのが中国である。その結果、中国市場では独走していた韓国勢の液晶テレビも、シェアの低下を免れることはできなかった。中国市場で闘うためには、ローカル企業と同価格帯で対峙できる製品戦略が必要であることが示唆される。