企画委員として筆者が担当したセッション「車載用リチウムイオン電池の現状と安全性評価試験」における、電池本体と安全性に関する内容を訴求した解説メッセージは以下の通りである

 「2018年から一段と強化された米国ZEV規制、19年から発効する中国NEV規制を受けて、自動車業界の電動車開発が一段と加速しています。そこで最も重要なコンポーネントのひとつである電池、とりわけリチウムイオン電池は、技術開発、コスト低減、生産キャパ拡大に向けた投資戦略で、電池業界の競争が激しさを増しつつあります。

 本セッションでは、日本および韓国の電池企業から各社の現状や今後の展望、ビジネス戦略についてお話しいただきます。一方、2016年7月から適用された車載用電池の安全性に関する国連規則は、自動車業界や電池業界にとって重要な指標となっています。さらには中国のGB/T規格、各社の独自評価試験等、車載電池開発には大きな負荷がかかっています。受託試験から認証事業を国内にてワンストップで提供できるエスペック㈱は、各業界の開発効率を高める上で大きな役割を担っています。本構成により、関連業界各社にとっては有意義なセッションになるものと確信します。」

 安全性や信頼性が重要であることは言うまでもなく、国連規則にまで拡大され車載電池の認証を取得できなければ販売できない状況にある。電気自動車(EV)やEVバスでの火災事故が起きてきたこと、そして現在も発生していることから、規則が義務付けられることになった。

 以前のコラムでも記述したが、日本のEV等で市場での火災事故を発生したものはない。それは、自動車各社や電池各社が、国連規則以上に独自の厳しい基準を設定し、開発過程ですべてクリアしているからにほかならない。

 それに対し、火災事故が偏在しているのがテスラの「モデルS」と中国ローカルのEVタクシーやEVバスである。米国と中国市場では、国連規則ECE-R100.02 Part2の適用を強いられてはいないが、その分、それぞれで規格が適用されつつあるものの、規格の本格化が十分に進んだとは言えない。

 シンポジウムで自動車各社がプレゼンしたセッションでは、トヨタ自動車の安全性と電池性能の進化を追い求める全固体電池の研究開発、ホンダのモバイル電池パックシステムへの取り組み、独ダイムラー・シュトゥットガルト研究所の電池の安全性を最大に高めるための電池モジュール(単セルの集合体)からパックシステム(モジュールの集合体)に至る開発状況など、いずれも安全性を基本に開発している状況が説明されている。

 会場からの質問も多岐に亘ったが、技術開発面では安全性や信頼性に関する質問が多くを占めた。テスラの火災事故原因に対する質問も出たが、明確な回答は得られていない。それもそのはず、当事者であるテスラが明らかにしていないのだから無理もない。

 テスラのような新興ベンチャー企業や、電動化の歴史と開発が浅く、技術完成度が低い中国ローカルメーカーは、安全性に関する考え方を一段、二段と高めていくことが必要である。そのためには、ECE国連規則に類似した試験をクリアするのは必定だが、それよりも自主的に設定するよりハードルの高い限界試験など、日本の自動車各社が常に実施している独自の限界試験などをベンチマークして、安全性に関する検証と開発を早急に進めていくことが求められる。

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