2013年に市販されたBMWのEV「i3」とPHV「i8」には、サムスンSDIのLIBが採用された。今後のBMWのLIB調達先としてCATLが組み込まれることになれば、サムスンSDIにとっては競合関係になるだけでなく、ビジネスにおける脅威ともなり得る。事実、LG化学の関係者が「今後の競合脅威として考えているのはCATL」と筆者に直接話していることからも、今やCATLが台風の目となっている。とすると、上図のトップ5の構図にも影響が及ぶことが想定される。

 筆者は、2016年12月に中国深センで開催された中国電池連盟主催のワークショップで講演した。その後に開催された懇親夕食会で筆者の隣に座ったのはCATLのメンバーであった。同社の事業が好転していることを筆者に説明しながら、「日本の自動車各社にLIBサンプルを出しており、ある自動車メーカーの次モデルEVへ供給する候補になっている」と話してくれた。

 このように中国のBYDとCATLが躍進している中、韓国の2社、サムスンSDIとLG化学はいまだに中国政府から「バッテリー模範基準認証」が取得できていない。バッテリー模範基準認証を取得していると、補助金の対象となるので、完成車メーカーに売り込みやすくなるが、韓国2社はこれが適わないということだ。これも、THAAD配備が影響している中で、今後もこの認証が取得できないリスクが日増しに高まっている。

 その影響は如実に表れている。VWは中国ビジネスで当初計画していたLG化学からのLIBの調達をCATLに方向転換した模様だ。エコカー補助金の対象LIBとなっていないLG化学よりも、CATL製を適用する方が有利となる。

 VWの電気駆動車両(xEV)には旧三洋電機のニッケル水素電池を適用した時代から昨今のLIBに至るまで、パウチタイプではなく、角型金属缶タイプを適用してきた。CATLは、パウチタイプより信頼性が高いと考え角型金属缶タイプでビジネスを展開中であり、VWの車両設計もCATL製の方が取り込みやすいことになる。これもCATLには追い風となっている。

 一方、米国ではテスラが主導するギガファクトリーに注目が集まる。中国のネットサービス企業である騰訊控股(テンセント)から約1960億円、5%の出資を受けたという。調達資金は今夏に市販される「モデル3」の生産準備に充てられる模様だ。

 そのテスラに関しては、時価総額が米自動車メーカーで首位になったと4月11日に報じられた。時価総額は約5兆6500億円で最大手のGMをわずかに上回った。販売台数では100倍以上の規模を誇るGMにとっては大きな屈辱とも映る。それだけ、xEVの拡大が市場で大きな意味を物語っている。

 このように米大手老舗自動車メーカーは時価総額でテスラに抜かれたわけだが、そのうちの1つであるフォード・モーターが、中国市場でエコカービジネスを大々的に展開すると、日本経済新聞(4月8日付)が伝えた。それによれば、2025年までに中国市場でのエコカーの販売比率を7割に拡大するとのこと。中国の重慶長安汽車との合弁工場で生産したPHVを、まずは2018年初頭に発売するという。5年以内には、航続距離が450キロメートルを超えるSUV(小型多目的スポーツ車)のEVを発売するともいう。

中国市場での戦略は?

 今後のエコカー市場は中国をトップ(2020年以降は30%強、35年には40%程度)に、米国、欧州が主要市場となって拡大されていく。これらの市場では、PHVとEVが主体に浸透していくことになる。一方、日本市場では燃費と価格の面からHVがさらに増大するであろう。

 中国では外資系自動車各社がエコカーライセンス取得を目標にしつつ、中国での大きな市場開拓に邁進する。フォードの中国市場における今後の大胆な市場開拓戦略は、エコカーライセンスの取得に自信をもったことでの判断かとも推測される。

 外資系電池各社もバッテリー模範基準認証の取得に向けたロビー活動をしている。しかし、中国のエコカー補助金が2020年にはなくなることを考慮すれば、模範基準認証を取得できなくても自立できる強いビジネスモデルを描けるならば、それはそれで意味がある。事例としては、トヨタとビジネスを展開しているプライムアースEVエナジー(PEVE)、トヨタとホンダと、それぞれにビジネスを展開しているパナソニックなどがある。

 日本の部材業界や装置業界も個社単位で中国ビジネスを拡大している。他にもGB規格で縛られる車載用電池の安全性・信頼性に関してビジネスを拡大する企業もあり、中国でのエコカー戦略がもたらす産業界への影響はとてつもなく大きく、それだけにビジネスチャンスとも言える。しかし同時に、政策方針が急転する中国ならではの独特な制度に対して、どこまでリアルタイムで追随できるか、リスクヘッジの大きさも付きまとう。