『日経ビジネス』2017年2月6日号に掲載された特集「元素が買えない」は業界に大きな話題を提供した。20ページに及ぶ本記事は内容が濃く、テレビでも採り上げられるなど、関係者にとっては見逃せない記事として伝えられた。2016年12月上旬、当誌の記者から筆者も本記事に関連するインタビューを受けた。

 元素戦略を語るうえで見過ごすことができないのは中国市場だ。特に希少金属を政治的に支配する構造が漂い、この実態は現地で確認することが重要と記者に伝えた。記者は実際に現地へ赴き、元素ビジネスを取り巻く状況を克明に取材し、説得性のある記事として伝えた。

 一方、毎日新聞はんが発行している『週刊エコノミスト』2017年2月14日号では、これも20ページにわたる特集「電池バブルがキター!」を掲載した。筆者は寄稿を依頼され、「ソニーは撤退、日産は売却へ 日の丸メーカーが招いた落日」という記事を執筆した。

 このように、電池ビジネスや元素ビジネスも大きな柱の一つとして、日韓中を中心とした関連メーカーがエコカー戦略において激動の最中にある。ビジネス戦略を正しい方向で描けているか、そして今後も描き続けられるか、そこが各社が生き残れる条件の一つであろう。

ドイツ勢自動車業界の本気度

 2月上旬、ドイツ・マインツで自動車の電動化と車載用電池に関する国際会議「AABC(Advanced Automotive Battery Conference) Europe 2017」が開催され、筆者も参加した。自動車業界や電池業界、システム業界、部材業界、試験機器業界、調査業界、コンサル業界、そして公共研究機関など、幅広い業界から参加があった。

 思い起こせば、2001年に第1回のAABCが米国・ラスベガスで開催されてから16年が経過した。第1回から講演者として招かれ、第2回から4回までは先進電池のセッション・チェアパーソンとして同会議に関わってきた筆者にとっては、この16年間の歳月が、業界の変遷が濃縮された縮図として感じられる。

 今回の会議の特徴は、例年に比べて緊張感が漂っていたことであり、また議論の内容も一段と掘り下げられ、いつになく充実していた。具体的には、以下のように表現できる。

  • ①会議には昨年と比較して1.2倍にあたる720人が参加した。欧州からの参加がもっとも多く、日本からも100人以上の参加があり、過去に欧州で開催されたAABCでは最高の人数を記録した。逆に、韓国と中国からの参加者が今までになく少なかった。
  • ②全体的に参加者が増加した理由は、独ダイムラーと独フォルクスワーゲン(VW)の欧州2強が、電気駆動車両(xEV)の開発に本腰を入れたことによる。両社ともに巨額な研究開発費を投じ、2025年までに新車販売台数の25%をxEV、特に電気自動車(EV)とプラグインハイブリッド車(PHV)にすると昨秋発信したことで、自動車業界や関連業界各社が刺激を受けて参加したと思われる。
  • ③日本企業の参加者が増加した理由は、 欧州勢のxEV拡大戦略をビジネスチャンスと捉え、顧客開拓を狙って、関係者が一堂に会する本会議で積極的なビジネス交渉を展開したためと思われる。
  • ④逆に韓中勢の参加者が激減した理由だが、中国に関してはxEVや関連ビジネスのバブル真っただ中のため、会議に参加するより実務推進に集中特化したためと思われる。一方で韓国に関しては、サムスンSDIとLG化学の2強が、中国に投資しているにも関わらず、中国政策の「バッテリー模範基準認証」を未だに取得できず、その対応戦略に追われているためと思われる。
  • ⑤欧州自動車業界とTier 1各社の発表内容は前回より充実。事業実務展開の勢いを受け、現実的で内容のある発信になった。