リサイクル技術の確立とビジネスモデル

 資源確保や価格高騰と言う意味では、LIBのLiも重要な元素である。Liは鉱物から発見されたため、ギリシャ語で石に相当するLithosに由来してリチウムと命名されている。このLi価格も、2017年初頭比で17年末には30%以上上昇した。ただしCoと異なるのは、資源が世界的に分散していること、Li資源はLi鉱石や塩湖、あるいは海水と複数の源があることだ。

 もっとも、Li資源の権益確保は国や産業界にとって重要な課題だ。韓国の前大統領である李明博(イ・ミョンバク)政権時代に、韓国国家プロジェクトはWPM(World Premium Material)を2010年に立ち上げた。18年までのプログラムとして、LIBの新素材開発を加速させた。その一方で、前大統領はトップ外交として南米ボリビアのLi権益を確保するために奔走した。国家戦略としてのロビー活動の一環であった。

 LIBは有用な元素を含むだけに、回収からリサイクルに関するビジネスが大きな産業を生むことは必至である。特に車載用LIBから多量に回収される希少金属がその価値を握っている。

 ハイブリッド車(HV)に適用されてきたニッケル水素電池では、自動車各社の電池回収にはじまり、材料メーカーと共にリサイクル事業は定着している。同じように、車載用LIBの回収は自動車業界が中心となって進めつつある。

 当然ながら、リサイクルの事業化で重要なことは、コスト的に成立し収益を上げられるビジネスに発展させることができるか、そして火災や爆発事故を回避する安全性の追求である。

 従来技術としては、LIBを砕いて酸によって溶解した後に、希少金属を回収する方法が用いられていたが、処理工程が複雑で、その分、コストがかかるリサイクルプロセスとなっていた。

 これに対し、ホンダと日本重化学工業などが中心となって、新たな再利用技術を確立した。LIB電極の不純物を除去して溶解した後に、NiやCoを取り出すプロセスである。その回収した元素を新たなLIBに使用する技術である。まだ開発途上ではあるものの、2020年までの実証実験を通じ、25年の実用化を目指している。高効率かつ低コストプロセスを確立できれば、大きな知財となってグローバルな展開にも発展させられる可能性がある。

 1月29日から2月1日まで、ドイツ・マインツで自動車の電動化と車載用電池に関する国際会議「AABC(Advanced Automotive Battery Conference) Europe 2018」が開催された。昨年までの会議とは異なり、本会議では今後の発展が期待させるLIBのリサイクルに関する技術やビジネスモデルの議論が少なからずあった。

 例えば、ベルギーに本社があるUmicore(ユミコア)だ。LIBでは正極材料でトップを走る部材メーカーだが、いよいよリサイクル技術も部材事業と同様に大きな柱としてのビジネスを掲げた。正極のCo、Ni、Liおよび集電体のCuの回収とリサイクルを重点課題として取り組んでいる。その拠点は、約40億円投資して年間7千トン規模のリサイクルが可能となるベルギー工場をはじめ、米国、南米ブラジル、アジア太平洋、東南アジア、南アフリカと、6つを設けている。

 カナダのLi Cycle Corporationの試算によれば、2017年のLIB需要が100GWhに上り、21年は344.5GWhになるだろうと展望。一方、17年にリサイクルに回ったのは5~15GWhと見積もった。今後は電動車からのLIBがリサイクルされることで、リサイクル事業はビジネスチャンスと捕らえている。しかし、その過程での火災事故も多いので、今後はリサイクルに特化したスペシャリストが必要になるとも。

 いずれにしても、回収からリサイクルまでに至る事業は「静脈産業」であるが、材料・化学メーカーの技術力が欠かせない。結局は、競争力のあるリサイクル技術を他社に先行して事業化できれば、その恩恵は大きな形となって還元される。LIBの製造と言う「動脈産業」に特化する中国とは別に、リサイクルまで自己完結するビジネス競争をリードするのは、化学系産業競争力のある日本か欧州か、その覇権争いになるのではないだろうか。