併せてCoの生産は、銅(Cu)やNi生産の副産物としてのみ確保されることが悩ましい課題である。CuやNiの市場価格が低迷すれば、これらの生産量は減少し、同時に減少するCoの価格が高騰するからである。

 それ以前に、現在の全世界的な電動車シフトの波を受けてCoの需要が増した。2017年後半のCo市場価格は、価格がほぼ安定していた16年後半に比べ約2倍の30ドル/ポンドを付けたことが象徴している。

 18年以降は各国の環境規制も手伝い、電動車の大幅な拡大が見込まれ、当然ながら元素戦略ではCo資源が台風の目となるだろう。住友商事はこのような背景から、6千トンの権益を確保しているとのこと(最近お会いした知人談)で、商社にとっても元素戦略から資源調達も大きなビジネスの柱となっている。

 2017年の世界のCo消費量は約11万トンで、そのうち中国が50%を占有、そして電池用途だけで56%を占めたとのこと(Beijing Antaike Information Development)。英エネルギー調査企業であるウッド・マッケンジーによれば、25年までにCo採掘量は20万トンを超えると見込んでいる。この時点で、電動車用LIBへの適用は6万3千トン規模との見通しだ。

 それだけに、今後はCo需要の増加が止まらない中、コンゴから産出されるCoはもちろん、カナダ、中国、ロシアからも産出されるCoの資源争奪が既に進みつつある。

Coに依存しない正極材料の開発

 先に述べたように、主流となっているLIBの正極材料にはCoが不可欠な元素構成になっており、この課題に対する取り組みが重要だ。究極はCoフリーにすることだが、そう簡単な話ではない。

 LIBの正極は三元系NMCをベースに改良が進み、高電圧系へシフトさせる開発が続いている。すなわち、NMC成分比率 1:1:1から、6:2:2へ。そして 8:1:1への更なる開発で相対的にCoを低下させていくというトレンドである。その場合のそれぞれの充電電圧は、4.15Vから4.25Vへ、そして4.4Vへという進化が期待できる。

 しかし、NMCに対してそういうシナリオが簡単には進まない課題も共存する。ひとつは、Co比率を下げる一方でNi比率を高めれば高めるほど、限りなくNCAやニッケル酸リチウム(LNO)に近づく。NCAやLNOは熱安定性がNMC(1:1:1)より劣り、安全性の面での懸念が生じる。

 事実、車載用でLNOやNCAを単独で適用する大型車載用電池は基本的に無い。NCAを適用するのはモバイル用LIB、あるいは米テスラが適用している小型の円筒形LIB「21700」、そして三元系とNCAをブレンドする材料設計など、用途は限られている。

 また、充放電電位が高くなればなるほど、電解液の分解し易さが助長されることにもつながり、これもまた安全性を阻害する要素となる。そのような意味から筆者個人としては、安全性や信頼性の高いNMCのハイニッケル化は、LIBの安全性を担保すると言う観点から逆行する方向にあると考える。

 ならば、三元系の性能特性を損なわず、しかも安全性を同様に維持できるCoフリーの元素戦略開発が非常に重要な意味をもたらす。この知財を構築できれば、今後のLIB事業において大きな主導権を握ることになろう。日本の先端材料技術へのアプローチにより、他元素との組い合わせなどから新技術が開発されることに期待したい。