他方、東芝では、もともと重希土類金属を含まず、しかもネオジム磁石より耐熱性が優れるサマリウムコバルト(SmCo)磁石で、より高耐熱な磁石技術の開発に取り組んだ。SmCo磁石のFe含有量を20重量%程度まで増やしてもBHMaxをある程度維持できることは知られていたが、そこまでの比率が限界とされていた。東芝では、更に溶体化熱処理条件の最適化、均一な組織形成、大結晶粒化などの技術開発により、Feを25重量%まで増加させる技術を確立した。

 この技術は、JR九州の新型305系車両に2015年から適用されている。今後は鉄道車両のみならず、電動車への適用も期待されている。いずれにしても、ネオジム磁石とSmCo磁石で、重金属希土類元素フリーの技術を開発した成果は極めて高い評価に値する。資源に乏しい日本が、先端技術開発で特定の高価な資源に依存しないことを目的とした研究開発は、さまざまな元素リスクに対して、今後の大きな指針とヒントになるだろう。

リチウムイオン電池の元素戦略

 リチウム(Li)やCoが多用されるリチウムイオン電池(LIB)は、1980年代前半の旭化成における原理研究から機構構築、そして1991年のソニーにおける世界初の量産によって大きく開花した。

 実用化当初の正極材は、コバルト酸リチウム(LiCoO2)であり、Coは不可欠な元素として適用されていた(図の左上)。Coを用いないマンガン酸リチウム(LiMn2O4)も正極材として一部適用されてきた。2010年12月に発売された日産自動車のEVである「リーフ」のLIB(オートモーティブエナジーサプライ製)に適用された。

LIBの正極と負極材料の種類

 しかし、正極の劣化に伴うLIB性能低下の問題なども露呈し、現在は三元系と呼ばれるニッケル-コバルト-マンガン(NCM)や、ニッケル-マンガン-コバルト(NMC)、そしてニッケル-コバルト-アルミニウム(NCA)などが主流となるほどに成長している。

 中国で主に適用されているオリビン酸鉄(LiFePO4)も、Coフリーのため注目されてきた。しかし、通常のLIBの作動電圧が3.6~3.7Vに対し、正極にオリビン酸鉄を適用すれば作動電圧が3.0Vにまで低下することで、性能魅力と言う意味では見劣りするのも事実である。

 それだけにCoは必要な元素となっているのであるが、ここにもCoの資源問題と調達リスクがつきまとう。資源と調達問題でいえば、生産国が政情不安なコンゴ民主共和国が約54%を占め、10%未満で中国とカナダという偏在ぶり。そしてそのコンゴでは、鉱山での児童就労問題が浮上している。すなわち、子供がマスクなどの保護具も身に着けないまま、手掘りで働かされている状況も今後の不安視される要因になっている。