サムスン電子の会見の様子(写真:ロイター/アフロ)

 2016年9月21日の本コラム「なぜサムスンの最新スマホは爆発したのか?」では、9月上旬に発生したサムスン電子のスマホ「Galaxy Note7」の爆発事故をうけ、サムスンSDIに在籍していた当時の経験から、筆者なりに事故の要因を探ってみた。お陰様で、多くのアクセスをいただいた。

 この事故から5カ月近くたった2017年1月23日、サムスン電子はソウルで同事故の原因に関しての会見を行い、筆者もそのライブ中継を見た。第三者の調査会社に協力を依頼、700人の研究者・技術者が、20万台以上のスマホと3万個のリチウムイオン電池(LIB)を用いて事故原因を調査したとのことであった。

 残念ながら筆者の下には、調査への協力依頼がなかった。サムスンSDIの役員OBだから身内であるがゆえに、客観性が得られないという理由だろう。

 仮に、本体のサンプルがあれば、筆者が現在在籍しているエスペックで、相当な評価実験ができていたはずである。というのもエスペックは、宇都宮の事業所に「バッテリー安全認証センター」を設立しており、ここでは車載用電池の国連規則であるECE R100Part.2をワンストップで認証取得できるなど、設備が充実しているからだ。

 車載用電池より扱いが容易なモバイル用LIBに対しては、様々な確認試験ができる。事実、車載用では国連規則の認証試験以外にも、電池パックでの過激で危険な試験を毎日のように行っている。電池部材設計、構造機構設計によっては、派手に火災や爆発が起きるといった事例も少なからず起こっているからだ。

煮え切らない事故原因調査報告

 さて1月23日は、調査を依頼された各社からの報告があった。詳細に説明した機関もある一方で、極めて広範囲にわたって分かりにくい説明もあるなど、結果報告はさまざまであった。

 最後の締めくくりとして、サムスン電子の無線事業部長である高東真(コ・ドンジン)氏が明確に事故原因をまとめるのかと思いきや、サムスンSDIとTDK傘下の中国Amperex Technology(ATL)のバッテリーメーカー2社のLIBに不具合があったという結論。そして、品質確保のために8項目の施策を実施して今後の品質検証体制を強化するという内容で終わった。事の真髄まで言及しなかった報告に対しては、いささか拍子抜けした感が否めなかった。

 そして、LIB自体の問題だと言いながら、供給する2社に対しては損害賠償を求めない決断をした。確かにLIBを受け入れたサムスン電子側の責任は重大だが、電池設計や製造過程で不具合をもっていた電池2社の責任はもっと重いはずだ。

 サムスンSDIはサムスン電子同様、サムスングループの企業なので、身内に損害賠償を求めないのは分からなくもない。一方で、外部調達先であるATLに対しても賠償責任を追及しないのは不自然な気もする。