グローバルなマーケティング活動で先行している韓国の電池メーカーは、日系電池業界にとっても大きな競合相手である。加えて車載用LIBに特化している中国のCATLは、政府の政策の波に乗りながら力を付けてきた。今や日系自動車各社にLIBサンプルを供給し始めており、ある自動車メーカーの次世代エコカーに搭載される候補の一つになっているという。

 日系電池業界は、これまでの韓国勢が立ちはだかるビジネス構造に加え、特に中国勢の今後の台頭と、併せて中国政府の政策にうまく対峙していかなければならない局面になっている。

日系部材メーカーの低価格帯戦略は必要ないのか

 このように、日系メーカーが厳しい局面を迎える中でも、住友金属鉱山のニッケル系正極の存在感は大きい。生産キャパは2000t/月。ソニーに供給している日本化学は100t/月規模。パナソニックに供給している戸田BASFでも1000t/月規模。住友金属鉱山は更に生産キャパを拡大し、17年には3550t/月までの増産体制を敷く予定だ。

 これで35GWhに相当するが、背景にはテスラEVの増産計画がある。テスラに供給しているパナソニックのLIB増産による要請に応えるためで、ニッケル素材に強い住友金属鉱山の集中したビジネスが浮き彫りになっている。

 しかし先に述べたように、中国勢の躍進が顕著である。今や、負極材料と電解液系の世界シェアは中国メーカーがトップに躍り出ている。正極材やセパレータも徐々にシェアを伸ばしつつあるのも事実である。

 2010年以前は日系の部材事業は非常に力強く存在感が大きかったが、今はグローバル競争の中で存在感がじわじわと後退しつつあると言っても過言ではない。

 もともとは材料科学や材料技術が得意な日本であるだけに、ハイエンド系の先端材料は今でも存在感が大きい。しかし、LIB部材において先端材料でリードできる期間は短くなっており、先行利益を享受できるビジネス力が低下してきた。

 それは取りも直さず、中韓の部材産業が発達してきた証しでもある。大学や研究機関での先端材料研究にも既に力を入れ始めている。とすると、その対抗勢力に対するビジネス戦略も従来の戦略だけでは通じないことを意味している。

 日本の半導体、液晶パネル、薄型テレビ、モバイル用LIBでも同じようなことが過去に起こった。今は、韓国の液晶パネル、薄型テレビ、モバイル用LIBも中国勢にシェアと利益を奪われている構造に陥っている。

 日系部材業界は、得意な先端材料技術開発をベースにもちながら、低価格材料でも中韓企業と戦えるビジネスを強化する必要があるはずだ。電池部材事業では、品質の安定性を武器にし、中韓の部材と戦うビジネスを構築しないと、先端技術だけでは生き残りが難しくなる時代を迎えることになるだろう。

 ここで言いたいのは、単なる価格競争に向かうことではなく、いかに安く作れるかという生産技術の改革でコスト競争力を高めるということだ。高性能、高機能だけが先端技術研究開発ではないはずだ。プロセス改革や低価格の素材を活用する部材開発も先端技術開発でもあり、さらには生産拠点の見直しも価格競争力を高め、ビジネスを優位に展開できる解の1つとして大きな柱になるであろう。

 電池部材において、日本が圧倒的に優位にビジネスをリードしてきた時代は終焉を迎えている。ハイエンドからローエンドも取り揃え、中韓に対しても価格的に競合できるビジネスモデルは本当に必要ないのか。日本の部材業界からそのような考えや戦略が聞こえてこない中、中国部材メーカーのシェア拡大は日に日に進展している。