政府筋主催のセミナー

 翌週の12月15、16日の両日は、同様に深センでエコカー関連のセミナーが開催された。これは前週の産業界側の主催ではなく政府関連のセミナーで、産学官から参加者があった。

 15日から16日午前にかけては、産学官からの話題を提供する形で進められた。一方、16日午後のセミナーは、中国の電池連盟会員企業に限定したセミナーで、全く異なる雰囲気のものであった。

 16日午後のセミナーは、中国政府筋とつながる重要な試験研究機関であるChina Automotive Technology & Research Center(CATARC)が主催するもの。毎年12月頃に開催されている。電池連盟会員会社が一堂に会する定期年次総会という位置づけだ。

 今回のプログラムは3部構成。第1部がアカデミズムからの講演。招待されたのは北京大学、天津大学、北京理工大学の3教授で、電池機能材料に関するもの。北京理工大学の材料研究の背景には、LIBの事故がいまだに発生していることがあり、その懸念から研究をスタートしたとのことだ。

 第2部は産業界側からの講演として、筆者が在籍しているエスペックが対応した。この電池連盟に会員として加入できる条件は厳しく、会員が持ち回りで動向や新技術などに関して講演できる企業でないと認められないという制限が付けられている。

 エスペックは上海にエスペック上海の事業所があり、ここでは弊社製品の販売機能を中国内でワン・エスペックとして事業展開している。すなわち正真正銘の中国企業である。そして同時に、エスペックグループのグローバル戦略の一翼も担っている。

 エスペック上海が、ビジネスチャンスの拡大ために、試験機器メーカーとしては初めて2015年12月に正式会員に認定された。このため、今回のセミナーでの講演を筆者に委ねられた。

 第3部はCATARCの電池評価結果に関する詳細説明で、特に電池業界にとっては重要な内容だ。

 すべての講演内容は機密性が高いということで資料配布は一切なし。というものの参加者は、一所懸命にスマホやデジカメでスライドを撮影していたのが、いかにも中国らしい。

 出席メンバーには電池業界として、EVメーカーでもあるBYD、万向A123、LG化学南京、LG電子、サムスンSDI西安等、自動車メーカーとしては上海汽車、本田技研等々が名を連ねた。全体での参加者は約70人程度であった。

 いずれにしても、エコカービジネス、電池ビジネス、試験評価ビジネスを中国市場で展開するには、CATARCの存在は絶大である。

 というのも中国版の車載用電池に対する安全性・信頼性評価試験であるGB規格に対しては、正にCATARCが主導している。事実、日系自動車メーカーの大半は頻繁にCATARC詣でを行い協議している。逆にこの詣でをしなければ、ビジネスにおいては大きな支障が待ち構えているというシナリオのようだ。

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