昨年12月9日、深センで開催されたInternational Lithium-ion Battery Seminar(矢野経済研究所と中国ガオゴンの共同主催)は、前日および前々日に、中国ローカル産業界のセミナーが連動で開催されたイベントであった。3日間の参加者は計1000人程度で大半は中国人だった。

 9日のセッションは日韓のスピーカーがメインだった。矢野経済研究所のイントロダクションの後で、まずはガオゴンのジャックCEOが中国における現状のレビュー。そして筆者の講演から始まり、本田技術研究所、日本ゼオン、Amazコンサルタント(旧三洋電機OB)、ソニーOBのコンサルタント、昭和電工、住友金属鉱山、東レバッテリーセパレータフィルム、韓国LG化学、最後にノーベル化学賞候補の旭化成・吉野彰顧問という順で各社が話題を提供した。

 当日は中国ローカルセッションとのパラレルプログラムであったため、このInternational Seminarへの参加者は200人程度であったが、中国勢の関心度も高かった。韓国からは20人程(講演者は1人)、日本からは30人程(講演者は10人)という構成であった。

 内容の詳細は省くが、ガオゴンの調査によれば、中国市場でのEV生産はやや保守的に観ても、2016年は48万台、17年は75万台、そして20年には250万台と予測されているという。

 また、中国市場ではリチウムイオン電池(LIB)部材の国産化が加速されているという。負極は100%国産で、輸入はなくなった。負極大手の日立化成が現地生産を開始したことで100%になったという構図である。電解液もほぼ100%の国産化を成し得て、特に中国メーカーは強いビジネスを展開している。正極材は95%、セパレータは85%が国産化で、現在も進展中であるとのこと。

 一方、バインダーや集電箔のアルミフィルムは5%程度が現地生産で、日本からの輸入が大半。ただし、今後はこれらも現地化が進み、日本勢も今後競争が厳しくなる模様だ。

 リチウム源の炭酸リチウムは品不足だったことで、2015年から16年にかけて約3倍に価格が高騰した。ただ、一時的な需要増のため17年には価格が低下する予測である。LIBの生産設備も国産化比率が向上中ということで、ベクトルは中国に向かっている。

 「中国におけるビジネスは中国側と協業しないと失敗に終わる」と、ジャックCEOは力説する。中国政府が国策で国内企業のビジネスチャンスの拡大を目標にしている以上、この言葉を真摯に受け止める必要があるだろう。日系企業も、中国政府との積極的な関わり、連携、協業といったしたたかな戦略創りが一層重要になるだろう。

 もっとも、ローカルメーカーの実力がない段階では、外資と中国企業との合弁を強いる一方で、ローカルメーカーが力を付けて来ると、外資を締め出すという方向は、いまだ根底にあるようだ。

 韓国電池メーカーのサムスンSDIとLG化学の中国市場におけるビジネスは相変わらず苦戦中である。いまだに、バッテリー模範基準認証を中国政府から受けていないが、今後も厳しいのではないかと予測されている。

 すなわち、中国政府のあからさまなローカル企業の保護政策に走っている方針に、両社とも厳しい状況にさらされているわけだ。日中政治外交も決して良くはないが、中韓外交はかなり悪化していることから、政治のしわ寄せが産業界にも影を落としている格好だ。サムスンSDIに至っては、西安に建設したLIB工場の稼働率を3分の1に下げ、人員も解雇したとのこと。

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