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 一方、自動運転はまったなしのビジネスとして、自動車業界やソフト企業がビジネスチャンスとして、そして同時に生き残り策として血眼になって開発に取り組んでいる。欧米勢の自動車各社の進展状況と比較すると、日系勢のスピード感は今一歩の感が否めない。この分野でも各業界に貢献すべく、当社の開発機能を向上させるための方向付けを行っている。

 自動運転のレベル4と5ではドライバーが介在しない領域となるが、その分、信頼性の構築は従来までにない以上の難度となる。現状、既存の自動車に搭載されているセンサーでも、降雪地帯ではセンサーが機能しないという自動車のクレームも起きていると言う。ましてや、自動運転においてはセンサー機能の不具合は致命的になる。

 完全自動運転では想定外と言う表現は通用しない。そのためには、あらゆる諸条件に対しても適合できるシステムの機能が求められる。当社ではそういう外部状況を想定した環境評価システムの構築を加速させている。雪、吹雪、霧などは当然ながら、雪質によっても自動車に及ぼす影響に差が生じる。こうした木目細かな環境モードも勘案して、技術課題を早期に抽出し、解決できる機能を提供することが当社の使命であり、各業界への貢献と考えている。

 当社の経営戦略と技術経営は、スムーズな両輪の駆動力として、ほぼほぼ機能しているように映る。その要因は、経営側と実務側の密なコミュニケーションにより、考え方のギャップを極力小さくしていること、経営側からの一方的な押し付けではない戦略立案、顧客のニーズを把握して顧客満足を得るためのビジネスモデル創りなどが功を奏している。

技術経営としての真髄 

(1)経営側と実務側との信頼関係が基本となる。そのためには、都合の悪いことも表舞台に出して、その解決を双方の立場で考え方向付けることが必要だ。不都合な真実をさらけ出さないことで、後に事業が悪化し事業撤退に追い込まれたサムスンの事例を結構見てきた。日系企業でも、データ改ざんや法令遵守に違反するスキャンダラスな事件も昨今の大きなニュースとして採り上げられている。いずれにしても不都合であればあるほど、表舞台での解決策や戦術を議論できる環境創りが経営側に求められている。

(2)経営戦略が明確で、それに基づく技術戦略の筋道が通っていることが必要である。さらにそこにリンクする戦術に論理的飛躍がないこと、主観的判断のみではなく客観性が担保されていること、実現された時の価値の評価がなされていることが前提となる。

(3)実務レベルの遣り甲斐や達成感を引き出すためのマインドやモチベーションを高める施策が効果的である。成果に応じた報酬の配分、会社の業績に貢献した分に対する対価の補償にも合理性が必要だ。負の連鎖は企業にとって大きな損失につながる。正の連鎖によって、更なる上昇気流を創ることが企業の発展に大きなエネルギーとなるはずだ。結局は人材に帰する。人材を大切にする企業経営が、持続可能で発展する企業を形作っていくものと考える。

謝辞

 2013年から約6年にわたって、本コラムの場を提供いただいた日経BP社に感謝申し上げます。そして、御愛読いただいた皆様方には賛否両論の御意見もいただき、本当にありがとうございました。