具体的に描いて、話題にできる単純さを

 メッセージ伝達は常に相手の集中力との戦い。話は短くないと聞いてもらえず、動画もまた短くないと見てもらえません。

 そうした制約の中、つい全体を包含できる抽象的な表現を選んでしまう。ところが、それでは印象づけたり行動を喚起することは困難です。

 もしもコミュニケーションの目的を、印象づけたり行動を喚起したりすることとするのであれば、できるだけ具体的に描いて、しかも話題にできるような工夫を取り入れながら構成を単純にする。それが特にネットでの発信に有効な工夫です。

 その参考になりそうな動画があるので紹介しましょう。

 最近、ネット上で話題になっているアイスランドの観光動画です。

Iceland Academy | How to avoid hot tub awkwardness

 アイスランドはその魅力を伝えるために、「アイスランド・アカデミー(こちら)」という学校を模したサイトを作り、アイスランドのさまざまな特徴や見どころを、授業のように一話ずつ動画で伝える取組みをしています。

 上の動画はその1つで、温泉に入る前に体をよく洗うのがエチケットです、ということを伝えるだけの内容なのですが、ユーザー心理をよく考えた工夫が詰め込まれています。

 まずモデル役のおじさんが素っ裸になって石鹸で体を洗い、先生役が歌いながら「頭・脇・股・足」と実演している様子が見た目にも演出面でも印象的で面白く、しかも清潔な状態で温泉に入るというメッセージも分かりやすく、さらに単純な流れなので音声が聞こえなくても、英語が分からなくても、見れば分かるようになっている。お金もかかっていない作りで、かつ連作ものでありながら、コンスタントに見られて(再生回数が上がって)います。

 たとえば、アイスランドの生活に溶け込んだ温泉の文化、なんて抽象的に言うよりも、裸になって歌いながら体を石鹸でこする場面を見せることで、はるかに多くの人の目を引き付け、気持ちよさそうな温泉のイメージとともに、印象付けられやすくなっています。

 冒頭の動画を見ていると、映像の中に海女さんやらレーシングカーやらあれもこれもと詰め込んでいるのですが、一つのテーマをこのシャワー動画のように具体的に描く方がはるかに目を引き効果的です。

驚きの英語ページ

 三重県は、目前に迫ったサミット開催地とは思えないほど、外国語対応力が脆弱な印象があります。

 県庁の日本語ページはサミットの情報を強力に押し出す作り(こちら)で、報道発表のページも驚くほど情報が豊富(こちら)なのですが、これに対して英語のページ(こちら)はどうかというと、まるでWindows95の時代を想起させるような、当時のインターネットのままです。

 中国語、韓国語、ポルトガル語、スペイン語にいたっては、それぞれページは用意されていますが、冊子の内容をそのままPDFでリンクしたものだけになっています。

 冒頭の動画を公開している三重県のサミット・サイト(こちら)は、「県民と関係機関・団体、市町や県が一丸となって、県全体の総力を結集し」「幅広い分野から多くの関係者の参画を得て」設立する三重県民会議によるもののはずなのに、英語のページすらありません。

 日頃はそれほど問題になることもないのかもしれませんが、海外から多数の訪問客が見込まれるサミットを目前に控え、知事がPR動画の中で「サミット開催にふさわしい場所」と高らかに語っているのを見た後の印象としては、たいへん寂しいものがあります。