行動を喚起できない動画

 せっかくなので、探して見つけたその動画を紹介しましょう。

伊勢志摩サミット三重県民会議 三重県PR動画

 動画は30秒ほどの長さで、鈴木英敬三重県知事が登場して、県の紹介をしているのですが、この内容がまた謎に満ちているのです。

 知事自身が読み上げているその内容を文字に起こしてみましょう。

----- 伊勢神宮の「伝統」は、千三百年以上に及ぶ遷宮という「革新」を繰り返し、受け継がれてきました。

 この「伝統」と「革新」の共存は、三重県に持続可能性を生み出し、テクノロジーの進歩を後押ししています。

 古くから共存共栄の精神が息づく三重県は、サミット開催にふさわしい場所てす。

 皆様、ぜひ三重県へ、お越しください。-----

 わずか四文で構成されている短い文章ですが、まるで独り言ポエムのような、何を言っているのかよく分からない内容です。

 伊勢神宮が伝統だという気持ちは理解しますが、遷宮についての十分な知識がなければ革新だという概念につなげるのは困難で、伝統がどう革新と共存しているのか、なぜそれが、また何の持続可能性で・・・と、首をかしげるような日本語のオンパレードになっています。

 サミット開催にふさわしい場所ですと言われても、もう選ばれて開催が決まっているわけですから、改めて言う話でもないでしょう。

 県庁の動画紹介ページには、「伊勢志摩サミット開催を契機として、主に都市圏の人々及び訪日外国人をターゲットに、三重県を印象づけ、興味を持っていただけるように、三重県PR動画を制作しました」とありますし、動画の最後で「ぜひ三重県へお越しください」と言っているので、三重県に行くという行動を喚起させるのが目的だと理解しますが、これではどう好意的に見ても難しいでしょう。

 原稿を細かく見ると、短い動画でキーワードだけでも覚えてもらおうという意図が強く感じられるのですが、あまりにそのキーワードが抽象的すぎて、これでは誰の関心も引けません。

 重ねて不十分なのは、YouTube画面の説明欄にある説明書きです。そこに書かれてあるのは、

 「伊勢志摩サミット三重県民会議作成の三重県PR動画です!」

 という言葉だけ。それ以外に情報は一切なく、詳細な情報へのリンクもありません。この動画は「伊勢志摩サミット三重県民会議」という名称のアカウントで公開されているのですが、その説明もリンクもありません。

 すっきりしないので、検索して「三重県民会議とは」というページを見つけた(こちら)のですが、「設立趣旨」と「基本方針」、「会議資料」があるだけで、肝心の「三重県民会議とは何か」がよく分かりません。

 三重県民会議とは、どんな人たちが、何のために集まって、どんな活動をする、「会議」なのでしょうか。誰かが真面目に考えて、すでにある文章をリライトすれば、一言で言える形にすぐまとまりそうな気がしますが、なぜこの状態で良しとしているのでしょうか。

 本当に「ぜひお越しください」という意識なら、有り得ない「雑な仕事ぶり」です。