規制緩和が見込まれるのはリーマン・ショック以降規制が強化されてきた金融と、環境保護の観点から資源開発が制限されているエネルギーの分野においてです。共にある程度の規制緩和が期待できると見ています。根拠とし、前者についてはゴールドマン・サックス出身のスティーブン・ムニューチン氏が財務長官に指名されたことが挙げられます。後者は、エネルギー業界が元々共和党支持であることが挙げられるでしょう。

通商政策と移民規制はマイナスに

 次に、マイナスとなる政策を見ましょう。米国民の間で自由貿易協定に対する抵抗が強いことを考えると、環太平洋経済連携協定(TPP)からの離脱はほぼ確実と思われます。それよりもさらに影響が大きいのは北米自由貿易協定(NAFTA)の再交渉(または離脱)です。

 TPPはまだ発効していないため、仮に流れたとしても、将来得られる利益がなくなるだけで新たな損失が生じるわけではありません。しかしNAFTAは違います。既に稼働しているNAFTAが本格的に見直されることになれば、多大な悪影響が発生すると予想されます。

 中でも甚大な影響が見込まれるのが自動車メーカーです。米国を含む世界の自動車メーカーの多くは北米で販売するクルマを人件費の安いメキシコで生産し、NAFTAを活用して米国やカナダに輸出しています。このサプライチェーンが寸断されることになりかねません。

 NAFTAの再交渉については、1)影響が大きすぎること、2)共和党が自由貿易を旨としており再交渉に反対する、と思われることから、実現の可能性は低いと見ています。

 ただしメキシコへの工場移転についてトランプ氏は最近、口先介入によって移転を牽制しています。この問題については後ほど触れます。

 自由貿易協定以外でトランプ氏が問題にしているのが中国です。大統領就任後に中国を為替操作国に指定すると表明。また、中国で製造した商品を米国に輸出しているとして、アップルなどの企業を非難しています。今後、中国からの輸入に対して反ダンピング関税などを適用するケースが増えると思われます。

 なお、日本については態度が変ってきています。選挙戦の初期には「米国の雇用を奪っている」と非難する場面がありましたが、途中からそうしたことはなくなりました。貿易に関して日本が直ちに問題になることはなさそうです。

 もう1つ、経済や株式市場にマイナスと思われる政策が移民の規制です。2016年11月の米国の失業率は4.6%、9年ぶりの低水準です。こうした中、トランプ氏は移民関連の規制を強化し、犯罪歴のある不法移民300万人を国外に追放すると表明しています。これが実現すれば、人手不足が深刻化して、成長を阻害する要因になる。あるいはインフレを招くなどの問題が生じる可能性があります。

トランプ氏の政権運営は大丈夫か?

 政策以外に考えておかねばならないのが、トランプ氏の政権運営に関するリスクです。トランプ氏は政治や行政の経験がなく、こうした方面の知り合いも少ないでしょう。加えて大統領選で共和党と対立したため、党のバックアップをどの程度受けられるかも不透明です。

 こうした点を考えると、日本の民主党政権のように政権発足後にいきなり迷走し、政治が機能不全に陥るリスクがないとは言い切れません。市場参加者の多くはトランプ氏がこれまでの大統領と同じように政権を運営できると考えているようですが、政権運営がうまくいかないリスクも考慮しておくべきでしょう。