金融緩和は無力か?

 だからといって金融緩和は円高に効果がないわけではありません。通常なら利下げも量的緩和もそれなりに効果はあるでしょう。ただし金利はこれ以上に低下する余地がなく、資金もこれまでの量的緩和でじゃぶじゃぶとあっては効果がないのが当たり前です。

 別の見方もできます。投資家がリスクをとれないため金融緩和が効かないだけであって、とれるようなになれば、それまでの緩和が効いてくるとの見方です。これは正しいと思いますが、その場合、別の問題が発生する恐れがあります。

 国内に滞留する大量の資金が国外に流出すれば、一気に円安が進むと予想されます。しかし将来またリスク許容度が低下すれば、国内に資金が還流してまた円高ということになりかねません。実は今回の円高にはこれに似たところがあります。

 2013年春から14年夏にかけて円は1ドル=100円前後で安定していました。しかし、その後再度円安となり、2015年6月には125円に達します。この円安の原動力となったのが、2014年10月に実施された追加緩和、いわゆる「黒田バズーカ2」です。

 しかし、この円安は長くは続きませんでした。2015年11月には早くも円高に転じ、今では「黒田バズーカ2」以前の1ドル=100円に逆戻りです。

 100円でも、ずっと100円なら問題はなかったでしょう。しかし、いったん125円に行った後の100円なので、円高として問題になっています。もっとも、問題にしているのは市場関係者やメディアであって、企業経営者からは今回の円高を問題視する発言はあまりありません。出てくる声には「安定を望む」というものが多いようです。

 それもそのはずです。2013年に1ドル=100円になった時はみんな万々歳でした、それからまだ3年半しか経過おらず、同じ100円で競争力が失われるということはありません。減益にはなりましたが、さらに円高が進むのでなければ一過性の問題です。経営者は今回の円高を問題とは考えていないようです。

 話がそれましたが、このドル円の動きを見ると、今回の円高の理由の1つは「黒田バズーカ2」にあったと思われます。そのままにしておけばドル円の為替相場は横ばい、ないしは若干の円高に止まっていたところを、日銀が余計なことをしたために円安になり、その反動で円高になったという仕組みです。

 このように金融緩和で供給された資金が増えれば増えるほど、為替レートの変動は大きくなると思われます。これも通貨変動のメカニズムを正しく理解していないことによる弊害といえます。

 本格的な円安局面が次に来た時に日銀は、円安を後押しするのでなく、何もしないか、あるいは逆に円安にブレーキをかける政策をとるべきでしょう。

市場のことは市場に任せる

 このように通貨と株式市場のメカニズムが誤って理解されていることは、市場や政策に様々な問題を与えています。特に政策については、円高を何とかしようという政府・日銀の姿勢が問題を大きくしています。

 「市場のことは市場に任せる」。昔は米国のルービン財務長官が、最近では同じ米国のルー財務長官がよく口にする言葉です。結局のところ、これがベストの政策ということでしょう。