トランプ氏の支持率は一時、今年4月以来の水準に低下

 最近のトランプ氏の支持率は低下基調にあります。米調査会社ギャラップの世論調査によれば、今年のピークは6月11-17日の45%。そこから緩やかに低下して、9月10日-16日の調査では、38%になりました。4月22日以来の低水準です。直近の調査では持ち直しを見せたものの、低下傾向に歯止めがかかったかは分かりません。

経済界で貿易戦争に反対の動きが表面化

 経済界ではトランプ氏の通商政策に反対する動きが表面化しています。9月12日付ニューズウィーク日本版は、「IBMからマテルまで米主要業界がトランプの通商政策に反旗-ロビー団体結成へ」と題する記事を掲載しました。60以上の業界団体が、業界横断的な組織を立ち上げ、米中貿易摩擦や北米自由貿易協定(NAFTA)見直し交渉などに関する事態打開のため、共和党議員を対象にロビー活動を展開するとの内容です。これまでも企業や業界団体がトランプ氏の政策を批判することはありましたが、今回は単なる批判や反対でなく、保護貿易を掲げるトランプ氏と自由貿易を掲げる経済界が、議員の支持を競う形になりそうです。経済界もいよいよ堪忍袋の緒が切れたということでしょう。

 こうした急速なトランプ氏の求心力低下の背景にあるのが、大統領としての資質に対する疑問です。匿名の政府高官を名乗る人物からのニューヨーク・タイムズへの寄稿や、著名ジャーナリスト、ボブ・ウッドワード氏によるトランプ政権の内幕を暴いた新刊などが描く政権内部の混乱を見て、トランプ支持を見直した有権者も多いでしょう。トランプ氏の求心力低下は今後も続くと予想しています。

 こうした中、トランプ氏は対中制裁第3弾の発動に踏み切りました。この発動は満を持してというよりも、求心力の低下に直面し、苦し紛れに踏み切ったように見えます。ただし、この制裁発動は両刃の剣であり、かえってトランプ氏の傷口を広げる恐れがあります。

物価への影響に注目

 過去2回の制裁において、米政府はできるだけ、関税の対象となる輸入に占める消費財の比率を抑えようとしてきました。消費者に痛みが及ぶことを避けるためです。しかし金額が大きくなった今回はそうもいきません。第3弾の対象には、トイレットペーパーや家具、自転車、食品、家電製品などの消費財が含まれています。それだけではありません。自動車や家電の部品も含まれていますが、そのため、こうした製品については米国産であっても、部品の輸入コスト増を転嫁するために値上げされる可能性があります。今回の追加関税によるコスト増のうち、どの程度を企業が負担し、どの程度を消費者が負担することになるのか分かりませんが、消費者の負担が大きければ大きいほど、米国民のトランプ氏に対する不満は高まり、求心力は低下することになります。

 物価ということに関連して言えば、日本もそうですが、米国でも原油価格が上昇しているため、ガソリン価格が高止まりしています。これに加えて関税引き上げで物価上昇となれば、消費者の抵抗はかなり強くなるのではないかと思われます。さらに言えば、原油高の原因の1つは米国の経済制裁により、イランからの石油輸出が滞っていることにあります。このように考えると、トランプ氏がガソリン高の責任を問われる可能性がありそうです。

 以上のように考えると、トランプ氏の求心力は低下し始めており、政権のレームダック(死に体)化は始まっていると思われます。これが足元の金融市場でリスク・オンの動きが始まった理由と見ています。今後もこの傾向が続くことにより、貿易戦争は終結に向かい、金融市場ではリスク・オンの動きが続くと予想しています。